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炭素鋼とは?分類方法や代表的な種類と用途

ものづくりや製造業では「鉄」がよく用いられますが、厳密にいうと主に「炭素鋼」と呼ばれる物質です。鉄に少量の炭素を加えると硬さ・耐久性・強度が増すため、機械部品や建築物、インフラ、船舶、自動車などさまざまな場面で用いることが可能となります。

一口に炭素鋼といってもその種類はさまざまであり、適切に活用するためには、概要はもちろん種類や用途などを正確に把握しておくことが欠かせません。

そこで本記事では、炭素鋼の概要や分類方法、代表的な種類と用途などを網羅的に解説します。ものづくりや製造業での適切な素材選びの参考にしてください。

炭素鋼とは?

炭素鋼とは、鉄と炭素を主成分とする合金です。合金とは、二種類以上の金属元素・非金属元素を融合させてできる金属様の物質です。

主成分は鉄と炭素であり、炭素の含有量が0.02〜2.14%程度ですが、鉄と炭素以外にもケイ素(Si)・リン(P)・硫黄(S)・マンガン(Mn)などが含まれています。これらはあえて添加されるものではなく、製造の過程で残ったものです。これらを基準値以上含ませたものは、合金鋼に分類されます。

Ni(ニッケル)・Cr(クロム)・モリブデン(Mo)などのレアメタルが添加されることもあり、一定の割合以上含むものは、上記と同じく合金鋼です。

続いては、炭素鋼の炭素含有量や組成・成分、強度を詳しく見ていきましょう。

参考:Jig Match.「炭素鋼とは?種類ごとの特徴と用途を解説」.

https://ts-taisei.co.jp/jigmatch/blog/carbon_steel/ ,(参照 2024-03-05).

炭素含有量

鉄は炭素の含有量によって鉄・鉄鋼・鋳鉄の3つに分類されます。一般名とJIS規格による定義は、以下の表の通りです。

一般名称鋼鉄鋳鉄

炭素含有量

0.02%未満

0.02%〜2.14%

2.14%~6.7%

JIS規格

純鉄

鋼鉄

性質

柔らかい

強度と硬さのバランスが良い

硬い

炭素含有量の少ない純鉄は、純度が高いがゆえに柔らかく粘性があります。そのため標準的な工具や条件下で切削しづらく、工具の早期摩耗や破損、加工精度の悪化、コストの増大を引き起こすため、工業的にはあまり用いられません。こうした課題を解消するために炭素が加えられ、含有量によって鋼鉄か鋳鉄かに分けられます。炭素鋼は鋼鉄の一種です。

参考:Jig Match.「炭素鋼とは?種類ごとの特徴と用途を解説」.

https://ts-taisei.co.jp/jigmatch/blog/carbon_steel/ ,(参照 2024-03-05).

組成・成分

炭素鋼の特性は、炭素含有量によって大きく異なります。そのため、含有量ごとの性質を押さえておくことが欠かせません。炭素含有量により、以下の3つに分類されます。

分類名

低炭素鋼

中炭素鋼高炭素鋼

炭素含有量

0.02%〜0.25%

0.25%〜0.6%

0.6%〜2.14%

JIS規格

純鉄

鋼鉄

代表例

・SPC材

・SS材

・S-C材

・SS材

・S-C材

SK材

これらに加えて、Ni(ニッケル)・Cr(クロム)・モリブデン(Mo)などのレアメタルが添加されることもあり、その含有割合は性質に大きく影響する因子です。

参考:Jig Match.「炭素鋼とは?種類ごとの特徴と用途を解説」.

https://ts-taisei.co.jp/jigmatch/blog/carbon_steel/ ,(参照 2024-03-05).

強度

炭素鋼の強度は、炭素含有量により異なります。炭素含有量が高ければ高いほど、硬度も高く、耐摩耗性にも優れています。その一方で、硬度が高まるともろくなり、強い衝撃や外力が加わると破損しやすくなる点には注意しましょう。

炭素含有量が少ない炭素鋼や純鉄の性質に近く、柔らかくて加工しやすい点が特徴です。しかし炭素含有量が少なすぎると、硬度と強度が劣り実用的ではなくなります。

なお、炭素鋼の強度や加工性を高めるためには、以下の手法が取られます。

  • 焼入れ:金属を一定以上の温度(変態点:組織構造が変化する温度)まで加熱しその後急速に冷やして硬度を高める。
  • 焼もどし:焼入れ後に行う処理で、粘りや強靭性を高める。低温焼もどしと高温焼もどしに大別できる。
  • 焼なまし:一定温度まで熱した後、徐々に冷却する。柔らかさが加わるため加工しやすくなる。
  • 焼ならし:変態点以上の温度で再加熱し、空冷する。鋼の組織を均一化できる。

炭素鋼の分類方法

炭素鋼は、以下のように分類されます。

  • SPC材(冷間圧延鋼板)
  • SS材(一般構造用圧延鋼材)
  • S-C材(機械構造用炭素鋼鋼材)
  • SK材(炭素鋼鋼材)
  • その他(SM材・SB材)

それぞれの概要や特徴、用途などを詳しく解説します。

SPC材(冷間圧延鋼板)

SPC材(冷間圧延鋼板:Steel Plate Cold)は、常温に近い温度で薄く引き伸ばされ、主に板材として利用されています。SPCC(一般用)が多用されていますが、絞り加工用のSPCD、深絞り加工用のSPCEなどの種類があります。

SPC剤の炭素含有量は少なく、柔らかい点が特徴です。そのため曲げ加工やプレス加工を行いやすく、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品の外観部分などをはじめとしてさまざまな製品に用いられます。

加工しやすい一方で、強度が高いわけではないので、強い衝撃が加わる可能性がある場面には用いられていません。

SS材(一般構造用圧延鋼材)

SS材(一般構造用圧延鋼材:Steel Structure)とは、炭素含有量が比較的少なく、低炭素鋼から中炭素鋼に分類される合金です。硫黄(S)とリン(P)の含有量の上限が定められている以外、特に明確な基準はありません。SS材(一般構造用圧延鋼材)で最も代表的なSS材は後述するSS400です。

SS材の特徴は、安価で汎用性が高く、コストパフォーマンスに優れている点です。ビルなどの建築物の他、橋などのインフラ、船舶、鉄道車両、自動車など幅広い場面で活用されています。

S-C材(機械構造用炭素鋼鋼材)

S-C材(機械構造用炭素鋼鋼材:Steel Carbon)とは、SS材よりも炭素が多く含まれています。中炭素鋼または高炭素鋼に分類される合金で、炭素含有量に応じてS45C・S50Cなどと表記されます。

S-C材は機械的強度が高く、熱処理により硬さと耐久性を最適化できる点が特徴です。そのため、硬さと耐久性の両方が求められる部品や工具などに使用されます。

SK材(炭素鋼鋼材)

SK材(炭素鋼鋼材:Steel Kougu)は、炭素工具鉄鋼材とも呼ばれる合金です。硬さと耐摩耗性があるのが特徴で、代表的な用途が工具のため炭素工具鋼という名称になっています。

炭素含有量が多く高炭素鋼に分類され、S-C材と同じく炭素含有量に応じてSKの文字の後ろに数字が入り、SK85やSK95などと表されます。SK95は炭素の含有量が0.95%ということです。

熱処理は厳密な管理の下行う必要があり、一定以上の高温では焼きが戻り硬度が低下するのが難点です。

その他(SM材・SB材)

上記であげた以外にも、SM材やSB材などがあります。

SM材のSとMはそれぞれ「Steel」と「Marine」を表しており、日本語では溶接構造用圧延鋼材と呼ばれます。リン(P)と硫黄(S)の含有量が低く、溶接性が高い点が特徴です。英語名からわかる通り船舶はもちろん、インフラを支えるパイプラインや発電プラント、ものづくりに使用される産業機械などに用いられています。SS材も同じく構造用圧延鋼材ですが、溶接が必要な場面では、溶接性が保証されたSM材が用いられます。

SB材(ボイラおよび圧力容器用炭素鋼およびモリブデン鋼鋼板:Steel Boiler)は、中温から高温の環境下で使用することを想定した炭素鋼です。SM材と比較して溶接性が低く、厚板溶接の際は十分な予熱を必要とします。耐熱性は高いため高温時でも黒鉛化しにくく、長期にわたって機械的強度を維持できます。

代表的な炭素鋼の種類と用途

代表的な炭素鋼の種類には、SS400とS45Cがあげられます。それぞれの特徴や用途をご紹介するので、素材選びの参考としてください。

【SS400】最もよく使われる素材

SS材(一般構造用圧延鋼材)にはSS300やSS490、SS540などいくつかありますが、その中でもSS400は最もよく使われる素材です。

SSの後ろに表記されている「400」は、材料の引っ張りに対する強さです。材料に引張荷重を加えて破断するまでの最大応力で表されます。SS400の引張強さは、400~510N/平方ミリメートルです。

特徴

SS400の特徴は、引っ張り力に強い点です。引張強度が高い物質はハイテン材とも呼ばれており一般的な材料として重宝しますが、鉄鋼材料としては特別に強い材料ではないため、強度が必要なケースでは他の材料の検討が必要です。

またコストパフォーマンスにも優れており大量生産に適している点や、溶接や切削などの加工を施しやすい点も特徴です。

しかし、強度を高める加工である焼入れができない点や、錆びやすいためめっきや黒染めなどの防錆処理が必要な点には注意してください。

用途

SS400は、強度が必要となるシーンや部品でよく用いられています。代表的なのが、建築物やインフラ、大型機械、船舶、車両などです。

【S45C】SS400に並んでよく使われる素材

S45Cは、SS400に並んでよく使用される素材です。S-C材(機械構造用炭素鋼鋼材)の一種で、炭素含有量は0.45%です。

特徴

S45Cは熱処理を加えることで、硬度や引張強度などの機械特性を調整できる点が特徴です。製造コストが低く、コストパフォーマンスに優れています。

一方で、溶接には向いておらず耐食性も低いため、表面処理が必要となるケースがあります。

用途

S45Cはその優れた機械的強度と耐久性から、さまざまなシーンで用いられています。自動車のエンジン部分やギア、ボルトなどある程度強度が求められる部分や、シャフトや歯車、軸、ピン、ボルト、ナットなど機械の内側の部品などが主な使用用途です。

まとめ

本記事では、炭素鋼の概要や種類、分類方法、代表的な種類の特徴や用途などを網羅的にご紹介しました。

鉄と炭素から合成される合金である炭素鋼にはさまざまな種類があり、炭素含有量やその他の物質の配合割合により、性質が異なります。使用する具体的な場面をイメージして、炭素鋼を選択し、その特性を最大限活用できるようにしましょう。

超硬素材・超硬加工 ソリューションナビを運営するエバーロイは、超硬素材・超硬製品の開発サービス、超硬素材の選定サービス、超硬合金の精密加工サービスを提供しています。素材開発から精密加工まで一貫して受けることで、数多くのお客様の多岐にわたるニーズに応えてきました。原因分析から課題抽出、素材選定、精密加工まで全ての場面でお客さまに寄り添った提案を心がけています。炭素鋼に関するお悩みがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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