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放電加工とは?放電加工の基礎知識やメリット・デメリットを徹底解説
放電加工とは、通電性のある金属を、電気を用いて加工する方法です。放電加工は硬度の高い素材を加工できたり、加工対象物の負荷を減らせたりといったメリットが多くある一方で、デメリットもいくつか存在します。
本記事では、金属の加工・切断に適した放電加工について、詳しく解説します。放電加工を活用するため、メリット・デメリットなどもしっかり理解しておきましょう。
目次
工作物を溶かす放電加工とは?
放電加工とは、電気の熱を使用し、金属を溶かして切断・加工を行う方法のことです。ここからは、工作物を溶かして目的の形状を作り出す「放電加工」の原理・種類について詳しく解説します。
放電加工の原理
放電加工は、電極と呼ばれる導電性ツールを用いて対象物の表面に電気を発生させ、表面と電極との間に放電を起こして溶かして加工します。必要な部分以外は除去するため、除去加工法に分類されるのが特徴です。また、放電加工は硬い材料や複雑な形状の部品を製造する際にも役立ち、精密加工にも適しています。
放電加工の種類
放電加工には「型彫放電加工」と「ワイヤー放電加工」の2種類があります。以下、それぞれの放電加工方法について見ていきましょう。
型彫放電加工
型彫放電加工とは、加工の形状を反転させた電極をワークに転写する放電加工のことです。主に、油や水といった電気を通しにくい性質の加工液に沈めて加工し、電極とワークを向かい合わせにした状態で放電させます。
また、型彫放電加工は複雑な形状や微細形状、硬度が高い難削材などにも対応可能です。ワイヤー放電加工とは異なり、面全体で加工するため、高い生産性も期待できます。さらに、ポケット形状や底がある形状の加工ができる点も特徴です。ただし、型彫放電加工は加工に時間がかかるため、量産には向いていないでしょう。
ワイヤー放電加工
ワイヤー放電加工とは、導電性ワイヤーを使用し材料を加工する方法のことです。ワイヤー状の細長い電極を使用し、ワイヤーをしっかり張った状態で工作物に近づけます。そのまま放電を起こし、糸のこぎりのように工作物を溶かして(切断)するのが工程です。
ワイヤー放電加工は高速で振動するワイヤーを用いるため、材料を簡単に切断できます。電極を加工する必要もなく、複雑な形状の加工にも適しているのがワイヤー放電加工の魅力です。ただし、ワイヤー放電加工は加工できる形状に制限があり、さらにはコストもかかるという点には注意が必要です。
放電加工の5つのメリット
放電加工には、以下の5つのメリットがあります。
- 硬度が高い素材への加工が可能
- 複雑形状の高精度加工
- 熱による変形がない
- バリが発生しない
- 対象物への負荷が減らせる
ここからは、放電加工の5つのメリットについて詳しく解説していきます。
1. 硬度が高い素材への加工が可能
放電加工は、硬度が高い素材を加工できる点がメリットの一つです。また電気が通る素材であれば、硬度が高い素材でも問題なく加工できます。通常の切削工具では難しい高硬度の素材や複雑な形状も、放電加工では1ミクロン単位の精密加工が可能です。
2. 複雑形状の高精度加工
複雑形状の対象物を高精度に加工できることも、放電加工のメリットです。放電加工では、導電性材料に対して非常に細かい部分まで加工できます。そのため、複雑な形状や微細な部品でも、精密な加工が可能です。
3. 熱による変形がない
熱による変形がない点も放電加工のメリットとして挙げられます。非接触加工である放電加工は、加工時に素材を直接加熱しません。放電によって素材を溶解・切除するため、加工対象には熱が伝わらず、熱による変形や歪みが発生しにくいところが魅力です。
4. バリが発生しない
放電加工はバリが発生しないのもメリットです。バリとは、一般的に金属や木材などを加工した際に生じる余分な材料のトゲを指します。
放電加工では加工時に材料が溶解されるため、バリは発生しません。特に複雑な部品の製造時にバリが発生すると、部品の品質や機能に影響を与えるなど、トラブルを引き起こす原因となります。バリが発生しない放電加工は、高精度でクリーンな部品の製造に向いていると言えるでしょう。
5. 対象物への負荷を減らせる
放電加工によって、加工対象物の負荷を軽減できることもメリットです。放電加工は非接触加工であり、加工中に直接的な接触がありません。そのため、対象物にかかる負荷は比較的少ないのが特徴です。バリの発生もなく、対象物への負荷も抑えられるため、微細な部品やデリケートな素材も効率よく加工できるでしょう。
放電加工の4つのデメリット
放電加工は、精度の高い加工ができたり、対象物の負荷を減らせたりするなど、さまざまなメリットがあることが分かりました。一方、放電加工にはデメリットもいくつか存在します。
- 電気が流れる素材しか加工できない
- 加工時間が長く量産に向かない
- 型彫放電加工の場合は、電極を準備しなければならない
- ワイヤー放電加工の場合は、加工できる形状に制限がある
ここからは、放電加工を用いる際に、事前に知っておくべき問題点を紹介します。
1. 電気が流れる素材しか加工できない
放電加工は、電気が流れる素材しか加工できない点がデメリットです。放電加工では、電気の放電を利用した加工を行います。電気の通らない素材は放電せず、熱で金属を溶かせないため、加工は不可能です。また、金属であれば全て放電するわけでもありません。ステンレスなどの素材は通電性が弱く、加工は難しいケースがあるため注意しましょう。
2. 加工時間が長く量産に向かない
加工対象の素材にもよるものの、一般的に放電加工は加工に長い時間を要します。放電した熱で金属を溶かして加工する放電加工の場合、一度に削れる量は少ないです。そのため、放電して金属を溶解する作業は複数回行う必要があります。
高精度な出来栄えではありますが、地道な作業となるため量産するには不向きでしょう。
3. 型彫放電加工の場合は、電極を準備しなければならない
型彫放電加工をする場合には、電極を準備する必要がある点もデメリットです。型彫放電加工では、加工形状に合う電極を作成しなければなりません。電極の作成には時間と手間がかかり、場合によっては生産性の低下につながる可能性があります。
また、電極を作るためには耐久性にも考慮しなければなりません。加工中に起こる電極摩耗をなるべく軽減するためにも、定期的な交換・メンテナンスが必要です。
4. ワイヤー放電加工の場合は、加工できる形状に制限がある
ワイヤー放電加工の場合、加工できる形状に制限がある点がデメリットです。ワイヤー加工は糸ノコのように、糸を上下に張った状態で加工します。このとき、ワイヤーは垂直方向に張られるのが基本です。したがって、曲線や複雑な形状の部品を加工する場合、思うように切断できない可能性があります。
放電加工に使われる代表的な電極素材
放電加工で用いられる電極は、銅やグラファイト、銀タングステンなどさまざまです。ここからは、放電加工に使用される代表的な電極素材を紹介します。
銅
銅は放電加工の電極の素材として、頻繁に使用されます。電極形状が豊富な上、比較的低価格で入手できるのが銅の特徴です。また、加工時に高温になった場合も安定性を保ちやすく、放電時の熱やストレスに対する耐久性があります。
しかし、銅は電極寸法の変化が大きい点に注意が必要です。銅は軟らかい素材のため、熱膨張係数が大きいです。そのため、微細な加工や高精度の加工が求められる際には、長時間の連続加工は避けることをおすすめします。
銀タングステン・銅タングステン
放電加工に適した材質として、銀タングステン・銅タングステンも挙げられます。銀タングステン・銅タングステンは、いずれも機械加工との相性がよい素材です。そのため、超硬材の加工にも適しています。高精度な加工や長時間の耐久性があり、主に微細加工や複雑な形状の部品製造に使用されます。
ただし、どちらも価格が高いため、高品質で単価の高い加工をする際に用いられることが多いでしょう。
グラファイト
放電加工では、グラファイトもよく使用されます。グラファイトは耐熱性が高く、機械加工に適した素材です。また、熱膨張係数が銅の1/3のため、電極を製作する際の加工効率も上がります。
グラファイトは耐摩耗性にも優れ、長時間の加工に耐えられる材質です。精密加工や微細加工においても、高精度を維持しやすいため、超硬材を加工する場合にも適しています。
電解加工との違いは除去の仕方
放電加工と電解加工の大きな違いは、工作物を溶かす際に使用するエネルギーです。電解加工も放電加工と同様、除去加工法に分けられます。いずれも似た加工法であるため、混同されがちです。
放電加工は通電する材料に放電させ、その熱で対象物を溶かす工程であるのに対し、電解加工は電解液中に工作物を入れて電気分解を行います。
放電加工とは何かを理解し、用途に合った活用を!
本記事では、放電加工とはどのような加工方法なのかを徹底解説しました。放電加工は電極と被加工物の間で放電を起こし、電気の熱で対象物を溶解させる加工法です。放電加工は時間を掛ければ掛けるほど、高精度な仕上がりを期待できます。また、熱による変化も少なく、硬度の高い素材への加工にも適しているのが特徴です。
ただし、電気の通らない素材は放電加工できないため、あらかじめ電極を用意する必要があります。放電加工の長所と短所を比較検討した上で、用途に合わせて活用することが大切です。
エバーロイ商事株式会社では、放電加工を含めたさまざまな超硬加工技術を提供しております。形彫放電加工機とワイヤー放電加工機を導入しており、さまざまな金属の対応が可能です。超硬金型の摩耗や劣化に関するお悩みがあれば、ぜひお問い合せください。
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