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ラップ加工とは?研磨方法やメリットデメリットについて解説
研磨加工でお困りではありませんか。ラップ加工のメリットは製品が長持ちし、焼けのない高精度な表面に仕上げられる点です。
本記事では、ラップ加工の研磨方法、メリットデメリットについて解説していきます。
ラップ加工は高精度な研磨加工法
まずはラップ加工がどのような研磨方法なのかについて解説していきます。ラップとラップ剤の解説も行います。
ラップ加工の特徴
ラップ加工は、工作物の表面を磨き滑らかにするための一つの加工方法です。ラップ盤と呼ばれる研削機械の上に工作物を置き、上から圧力をかけて高速で回転する研削砥石を用いて磨きます。
ラップ盤と工作物との間に砥粒(切削工具の切れ刃に相当)を含んだラップ剤を加えると、工作物の表面を滑らかに研磨可能です。精密部品の最終仕上げや削りにくく加工が大変な材料などの表面処理にも適しています。
ラップ加工を施すと製品が長持ちし溶着防止にもつながり、表面粗さが0.1ミクロンの美しい鏡面に仕上がります。ラップ加工では、超硬合金などの硬い金属でも研磨可能です。
ラップ剤の特徴と種類
ラップ剤とは、砥粒と呼ばれる研磨に用いる硬い粒子と潤滑油を合わせたものです。ラップ剤を使用して研磨加工すると工作物の表面がキレイに仕上がります。ラップ剤の砥粒には以下の3つがあります。
- アルミナ
- 炭素ケイ素
- ダイヤモンドスラリー
上記3つの砥粒について詳しく特徴を解説します。
アルミナ
アルミナは、ラップ加工する際に一般的に使用される研磨剤です。硬度や耐熱性、耐摩耗性に優れているため、主に鉄鋼などの金属に使われます。
一般的に一般鋼には褐色のアルミナ、ステンレスには白色のアルミナが用いられます。さらに、アルミナは樹脂やガラスなどにも幅広く使用可能な砥粒です。
炭化ケイ素
炭化ケイ素は、炭素が含まれていることから硬い特性を持っています。アルミ合金や銅合金などの非鉄金属の研磨加工に使用されます。代表的な炭化ケイ素は、黒色炭化ケイ素と緑色炭化ケイ素の2種類です。
一般的に黒色炭化ケイ素はアルミ合金などの非鉄金属に、緑色炭化ケイ素はガラスなどの非金属に対して使われます。硬さはダイヤモンドなどには劣りますが、費用面で優れた砥粒です。
ダイヤモンドスラリー
ダイヤモンドスラリーは、人工ダイヤモンドを用いて作られた砥粒です。ダイヤモンドは硬い物質としても知られています。そのため、超硬合金やセラミックス加工などに対して使用されます。ダイヤモンドスラリーは他の研磨剤と比べて切削性が高く、少量の使用で効果が得られます。
しかし、費用面と研磨する素材によっては消耗が早いことから、使用される素材や用途は限られます。
ラップ加工の2つの研磨方法
ラップ加工の研磨方法は、以下の2種類に分けられます。
- 湿式ラッピング
- 乾式ラッピング
上記のラッピング方法について、それぞれ説明します。
湿式ラッピング
湿式ラッピングとは、ラップ加工する際にラップ剤に潤滑油を多めに加え、低圧で加工する方法です。この方法により、砥粒が動いて工作物が磨かれます。
湿式ラッピングは加工量が大きいのが特徴で、粗仕上げや中間仕上げを施す際に適しています。仕上がりは、ラップの痕が残ってしまうため表面は無光沢になります。
乾式ラッピング
乾式ラッピングとは、ラップ加工する際にラップ剤に少量の潤滑油を加え高圧で加工する方法です。湿式ラッピングと同様に、砥粒が転がり工作物が研磨されます。
乾式ラッピングは加工量が少ないことから、工作物を精密に仕上げる工程に用いられます。工作物の表面は光沢のある鏡面仕上げです。
ラップ盤の種類
ラップ盤とは、ラップ加工の際に使用されるNC工作機械(数値入力で制御できる工作機械)のことです。ラップ盤は、大きく分けて以下の3種類に分けられます。
- 片面ラップ盤
- 両面ラップ盤
- 芯なしラップ盤
この中でも作業効率が良く、一度に多くの加工が可能な方法は両面ラップ盤です。3種類のラップ盤について、構造や特徴をそれぞれ解説します。
片面ラップ盤
片面ラップ盤とは、片面のみを研磨加工する際に使用するラップ盤のことです。ラップ盤に工作物を押し当ててラップ加工します。
おもりを上にのせて圧力をかけて行うタイプとエアシリンダを使用して圧力をかけ行うタイプの2つがあり、高い圧力をかけるほど加工速度が速くなります。
両面ラップ盤
両面ラップ盤は、上下2つのラップ盤で工作物を挟みこみ、両側の面を同時に研磨する際に使用する盤です。ラップ剤を流し込み圧力をかけ、上下2つのラップ盤の複雑な動きにより研磨加工を行います。
また両面ラップ盤は、上下の定盤、キャリアを回転させるサンギヤ、外周ギヤのインターナルギヤの4つで構成されます。両面ラップ盤を使用した加工方式は、以下の3種類です。
- 2way方式
- 3way方式
- 4way方式
2way方式から4way方式になるほど加工速度が速くなり、加工時間が短縮されるのが特徴です。
芯なしラップ盤
芯なしラップ盤は、円筒状の工作物をラップ加工する際に使用されます。工作物を調整砥石、ブレード(調整車)、研削砥石の3つで支え、固定せずに挟み込んで研削し仕上げる方法です。
工作物の外周面も内周面も加工可能です。研削抵抗による影響が少ないため、精度が安定しているのが芯なしラップ盤の特徴の一つです。また、自動供給装置で加工物を送り込むことが可能なため、大量生産に向いています。
ラップ加工以外の研磨方法
ラップ加工以外にも研磨加工する方法がいくつかあります。今回は、4つの研磨加工の方法をご紹介します。
- ホーニング加工
- テープ研磨
- バレル加工
- 超仕上げ
それぞれの特徴について、詳しく解説していきます。
ホーニング加工
ホーニング加工とは、粒度の高い砥石の回転と一定の圧力で押しつけ往復運動させながら研磨する方法です。加工の際は、多量の研削液を注ぎ加工します。
低速、低圧加工なので表面粗さが小さく、工作物の穴の内面を精密仕上げする際に用いられます。ホーニング加工は、高精度の求められる工作物にも使われる方法です。
テープ研磨
テープ研磨とは、研磨用のテープを工作物に押しつけながら精密に研磨する方法です。テープ研磨は砥粒が均一に添付されているため、キレイな面を作ることが可能です。
また、工作物を鏡面仕上げや荒仕上げなど目的に合った表面粗さに調整もできます。テープ研磨形状の加工が目的ではなく、高精度が求められる精密部品の表面仕上げで使用されています。
バレル加工
バレル加工とは、バレルと呼ばれるドラム状の容器に工作物、メディア(研磨石)、コンパウンド、水の4種類を入れ、回転させてバリを取りながら表面を磨く加工方法です。バレル加工は、以下のような作業で使われます。
- 製品のバリ取り
- R付け
- 表面の光沢仕上げ
- 平滑仕上げ
- スケール取り
パリを擦りおとすため細かい傷がなくなり、表面に光沢がでます。小さく複雑な形状の工作物も研磨できるため、幅広い素材を扱うことが可能です。
バレル加工は、自動車産業や電子機器などの精密な製品の仕上げに使用されています。
超仕上げ
超仕上げは、低速で回転する工作物にバネや油圧の力を利用して砥石を押しつけながら研磨する方法です。工作物の回転方向と直角に振動させる砥石を当てながら磨くことで、滑らかな面に仕上がります。グラビア印刷ロールや油圧シリンダーなどの仕上げに、超仕上げは使用されます。超仕上げを使うと、円筒状の工作物を短時間で滑らかな鏡面に仕上げることが可能です。
超仕上げは熟練度が問われる作業ではなく、費用面でも負担がかからないため、導入しやすい加工方法です。
ラップ加工のメリット
ラップ加工のメリットは2つあります。
- 高精度な研磨ができる
- 焼けが発生しない
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
高精度な研磨ができる
ラップ加工は、高精度な表面粗さに研磨が可能なことがメリットです。一般的に研磨加工を施す場合は砥石を使いますが、同じ圧力をかけてもコントロールが難しいため切り込み量は同じではありません。
一方でラップ加工は、ラップ剤に砥粒が混ざっており、砥粒が動いて研磨されるため安定した切り込み量が期待できます。品質のムラがなくなるので、品質が安定します。
焼けが発生しない
ラップ加工は、焼けの心配がない点もメリットです。焼けとは、砥石で研磨中に擦れて発生する熱により、工作物が焼けて変色や質に変化が生じることです。
焼けが発生すると、表面が硬化してしまい亀裂が入ってしまうこともあります。その点、ラップ加工であればラップ剤などを使用して研磨するため、焼けを起こさずに研磨仕上げが可能です。
ラップ加工のデメリット
ラップ加工の唯一のデメリットは、加工に時間を要する点です。高精度な仕上がりが期待できるラップ加工ですが、その分加工に時間がかかってしまいます。
ラップ加工の加工時間が長くなる理由は、研磨する際の加工速度が遅いためです。そのため、ラップ加工は人件費やエネルギー消費など多くの費用がかかり、大量生産には向いていません。
ラップ加工は精度の高い研磨方法
ラップ加工は加工に時間がかかるため、他の研磨方法に比べると大量生産には不向きです。その一方で、ラップ加工には精度が高いため表面がキレイに仕上がり、焼けの心配がいらないというメリットもあります。
金属研磨は、製品の最終仕上げにもかかわる重要な工程です。ラップ加工と他の研磨方法を使い分けて、効率と品質を両立してみましょう。
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