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研磨加工とは? 研削加工との違いや種類、手順について解説
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研磨加工とは、製品の表面を削り取る加工のことで、製品の仕上がりに大きく関わる加工方法です。
一口に研磨加工といっても、手研磨やベルト研磨、ポリッシング研磨などさまざまな種類があります。それぞれ特徴が異なるため、研磨加工の手順と合わせて把握しておくことが重要です。
そこで本記事では、研磨加工の概要や8つの種類、加工の手順を解説します。研磨加工に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
研磨加工とは?
研磨加工とは、製品の表面を研磨して表面を滑らかにする加工方法です。物理的に削り取るものもあれば、電解研磨のように化学変化を使用するものもあります。詳しくは後述しますが、研磨加工にはさまざまな種類があるため、それぞれの特徴を理解して目的や用途に応じて使い分けることが重要です。
研磨加工の特徴は、加工精度が高い点です例えば、電解研磨であればμmレベルで加工できます。手研磨であっても、作業者の技術や経験によってはかなり精密な仕上がりを実現可能です。
一般に研磨加工は、光沢のある状態にする鏡面加工に用いられ、光学機器や精密機械などの生産に活用されています。
研削加工との違い
研磨加工に似た加工方法に、研削加工があります。
研削加工とは、ダイヤモンドや炭化ケイ素などの高硬度の素材を砥粒に含む砥石を高速で回転させ、ワークを削り取る加工方法です。主に硬度が高く加工が困難な金属の加工に用いられます。
研磨加工と研削加工の主な違いは、その目的です。研磨加工は最終仕上げや鏡面仕上げ加工に用いられるのに対し、研削加工は対象物の不要な部分を削り取り、製品を形づくる目的で用いられます。
研磨加工の種類
研磨加工には、以下に挙げる8つの種類があります。
- 手研磨
- ベルト研磨
- ホイール研磨
- ポリッシング研磨
- ラッピング研磨
- バフ研磨
- バレル研磨
- 電解研磨
それぞれの研磨方法の特徴やメリット、デメリットを詳しく見ていきましょう。
手研磨
手研磨とは、作業者が研磨シートやスチールウール、ヤスリなどを用いて手作業で研磨する加工方法です。多くの研磨方法では専用の機械を用いますが、手研磨の場合、特別な機械は必要としません。
手研磨のメリットは、砥石や砥粒の粒度や大きさ、密度を変えることで、異なった表面仕上がりとなる点です。そのため、目的に応じて仕上がりを調整できます。また特別な機械を必要としないため、コストを抑えての生産もできます。
一方で、製品・部品が作業者の熟練度に左右される点がデメリットです。また他の研磨方法と比較して時間がかかるため、大量生産には向いていません。
ベルト研磨
ベルト研磨とは、研磨剤が付着したベルトサンダー(研磨ベルト)を高速で回転させ、そこにワークを押し当てて研磨する加工方法です。広い面積の研磨や均一な仕上がりが可能であり、板金加工や表面仕上げなどに使用されています。
ベルト研磨のメリットは、目的に合わせて効率的に加工を行える点です。研磨ベルトの粗さを変更することで、製品・部品ごとに仕上がりを調整できます。研磨ベルトには柔軟性があるため、平面の加工だけでなく曲線的な形状や複雑な構造を持つワークの加工も行えます。
一方で、研磨ベルトやグラインダーなど専用の機械が必要となるためコストがかかるのが欠点です。また研磨ベルトは消耗品なので、定期的なメンテナンスや交換が必要となります。
ホイール研磨
ホイール研磨とは、砥粒を含むホイール状の砥石を用いた研磨方法です。ホイールを高速で回転させながらワークを研磨します。精密仕上げや表面加工などの用途で用いられます。
ホイール研磨のメリットは、砥石の種類や砥粒の粒度を変更でき、目的に応じて柔軟に使い分けられる点です。加えて、均一な砥粒構造となっているため安定した加工ができ、仕上がりにバラ付きがありません。
一方で、部品の消耗が激しく定期的なメンテナンスや交換が必要となります。研磨ホイールが摩耗していたり傷が付いていたりすると、製品・部品の品質が低下するだけでなく、破損する恐れがある点には注意しましょう。電力消費も大きいので、ランニングコストも考慮しなければなりません。
ポリッシング研磨
ポリッシング研磨とは、ワーク表面を滑らかにし、光沢のある仕上がりにするための加工方法です。粗研磨の後に行われるもので、精密機器や光学部品の製造には欠かせません。
ポリッシング研磨は乾式で行われることもありますが、そのほとんどが湿式です。溶媒に添加物を加えた研磨液と、砥粒が用いられます。溶媒には水が用いられるのが一般的で、冷却や洗浄作用、砥粒の分散効果などがあります。添加剤は加工性能や精度の向上、分散性向上など研磨性能を高めるためのもので、一般的には酸やアルカリ、界面活性剤などです。
ポリッシング研磨は、バッチ処理(一括で処理すること)が可能であり大量生産に向いています。砥石も不要であり、メンテナンスや交換は必要ありません。
ただし、研磨液は定期的に交換する必要がある他、長尺物や棒状のものなど一部のワークの加工には適していない点は把握しておきましょう。
ラッピング研磨
ラッピング研磨とは、砥粒を混合したラップ材を使用して、表面仕上げ加工を行う加工方法です。ラッピングやラップ研磨、ラッピング加工とも呼ばれます。
ラッピング研磨は、主に精密部品や光学部品など精度が必要な製品・部品の製造に用いられます。液体状のラッピング液を塗布し、ワークを上下から圧力を加えながら研磨するのが一般的な流れです。
ラッピング研磨のメリットは、研磨剤を均一に塗布する方法のため、高い精度で平面を均一に研磨できる点です。また研磨による熱の発生が少なく、熱変形や性質の変化も少なくなります。
一方で、加工には時間がかかるため短時間での大量生産には向いていません。
バフ研磨
バフ研磨とは、布やフェルトなどの材料で作られたバフを回転させながら、金属やプラスチックなどのワークを研磨する加工方法です。
バフ研磨は、バフの目の粗さであるバフ番手や素材により仕上がりが異なります。番手が大きくなるほど粗さが細かくなるのが一般的で、800番のバフを使用すると鏡面加工が可能です。バフの素材ごとの特徴は、以下の通りです。
- 布バフ:柔らかく汎用性が高い
- ウールバフ:つや出しの仕上げ研磨に用いられる
- スポンジバフ:研磨力が抑えられており、仕上げ加工に用いられる
- ナイロンバフ:金属光沢や樹脂の汚れ落とす
- 不織布研磨剤ホイールバフ:傷や潤滑剤を除去し、表面をきれいにする
バフ番手や素材を変えることで、さまざまな表面仕上げに柔軟に対応できる点がバフ研磨の特徴です。
なお、バフ研磨を行う際は、バフ素材がワークの表面に残っていないかをチェックしましょう。
バレル研磨
バレル研磨とは、バレルと呼ばれる円筒状の容器にワークとメディア(研磨石・研磨材)、コンパウンド(研磨助剤)を入れ、回転や振動を与えて研磨する加工方法です。摩擦が生じるため、表面を滑らかに加工できます。またバレル研磨には、大きく分けて流動式・回転式・振動式・遠心式など4つの種類があり、それぞれ特徴が異なるためさまざまな製品に対応できます。
バレル加工のメリットは、大量生産が可能な点です。回転数や振動数を調整すれば、複雑な形状にも対応できます。
ただし、小さな傷やへこみができてしまうリスクや、一度に多くの素材が駄目になり製品化できない可能性がある点は把握しておきましょう。
電解研磨
電解研磨とは、電気を活用して金属表面を研磨する加工方法です。製品を陽極(プラス極)、カソードと呼ばれる対向電極を陰極(マイナス極)にして電流を流します。これまでに解説した加工方法は物理的に研磨するものですが、この方法は電気分解により化学的に研磨します。
電解研磨のメリットは、高精度な表面仕上がりを得られる点です。数μmレベルの微細な凹凸も、精密な平坦化が実現できます。
一方で特殊な機械を用いるので、コストが高くなります。加えて、研磨液が製品の隙間に入り込み、さまざまな問題につながる可能性がある点はデメリットです。
研磨加工の手順
一般に、研磨加工は以下の手順で行われます。
- 下地処理
- ならし
- つや出し
- 鏡面仕上げ
それぞれのステップで行われる処理などを詳しく解説します。
下地処理
研磨加工をするに当たって、まずは下地処理から行います。粗めの砥粒を用いて、表面の凹凸をならしたり、異物を取り除いたりします。
ここでの注意点は、表面を削り過ぎないようにすることです。あまりに砥粒が粗く削り過ぎてしまうと、最終的な仕上がりにも影響します。
また大まかに削ることが目的なので、細かい部分や厳密な寸法は気にせず進めていきましょう。
ならし
下地処理を行った後も、ワーク表面にはまだ凹凸が残っています。「ならし」の工程では、ワーク表面をさらに磨いて均一な仕上がりにします。
下地処理よりも細かい砥粒を使用して、ムラのない仕上がりを目指しましょう。
つや出し
ならしの工程で使用した砥粒よりも、さらに細かい砥粒を使用してつやを出します。その際に汚れも除去しておくと、後に行う鏡面仕上げの品質が向上します。
つや出しの工程では、紙やバフなどの固形の研磨剤ではなく、液体研磨剤を使用するのが一般的です。
鏡面仕上げ
最後のプロセスは鏡面仕上げです。つや出しのプロセスで使用した砥粒よりもさらに細かい砥粒を用いて、表面の仕上がりを調整します。ポリッシング研磨加工が用いられるのが一般的です。
まとめ
本記事では、研磨加工の概要や8つの種類、実際の加工手順などを網羅的に解説しました。
研磨加工とは、製品の表面を削り取る加工のことで、製品の表面仕上がりや見た目に大きく関わります。一口に研磨加工といってもその種類によって特徴や用途、メリット、デメリットが異なります。本記事を参考に、目的に応じた適切な使い分けをしましょう。
エバーロイ商事株式会社では、超硬素材選定・超硬製品開発・超硬精密加工に関するサービスを提供しています。素材開発から精密加工まで一貫したソリューションにより、お客さまのニーズや課題の解決をサポートします。研磨加工を活用して製品を製造したいとお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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この記事を監修した人
大久保 文正
エバーロイ商事株式会社
昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
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