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技術情報・技術コラム

熱伝導率とは? 熱伝導率との違いや求め方、金属の熱伝導率も解説

超硬素材の選定・開発から超硬加工のことならエバーロイへご相談ください

金属を加工する際には、その金属が持つさまざまな物理的特性を考慮しておくことが重要です。熱エネルギーの伝わりやすさを表す熱伝導率も考慮するべき特性の一つで、加工精度や加工のしやすさに影響を与えます。

そのため、金属を加工するに当たっては、熱伝導率についての理解が欠かせません。

そこで本記事では、熱伝導率の概要や似た用語との違い、温度との関係などを解説します。記事後半では、熱伝導率の求め方や金属の熱伝導率なども併せて解説するので、参考にしてください。

熱伝導率とは?

熱伝導率とは

熱伝導率を理解する前に、まずは熱伝導とは何かを見ていきましょう。

熱伝導(Thermal Conduction)とは、1つの物体内部に温度差があるとき、あるいは接している2つの物体間に温度差があるとき、熱エネルギーが移動する現象です。熱力学第二法則により、熱エネルギーは必ず高温部分から低温部分へと、分子や原子の振動を介して移動します。

この熱エネルギーの伝わりやすさを表したのが、熱伝導率(熱伝導度)です。単位はW/(m·K)(ワット毎メートル毎ケルビン)で表され、これは厚さ1mの物体の両端に1度の温度差があるとき、1m²当たりどれくらいの熱が通過するかを表したものです。熱伝導率は物質の種類や温度条件、状態により異なります。

熱伝導率と似た言葉に、以下が挙げられます。

  • 熱伝達率:物体表面を通じて熱エネルギーが移動する効率
  • 放射率:物体の表面から熱が放射される強さを表す物理量
  • 熱抵抗値:物体中で熱エネルギーの移動がどれだけ妨げられるかを表す物理量

それぞれの概要と熱伝導率との違いを詳しく見ていきましょう。

熱伝達率との違い

熱伝達とは、固体と液体、液体と空気などの2種類の物体間で、物体表面を通じて熱エネルギーが移動する現象です。このときの伝達効率を表すのが、熱伝達率(Heat Transfer Coefficient)です。

単位には、W/(m²·K)(ワット毎平方メートル毎ケルビン)が用いられます。熱伝達率は、流体の温度や種類、表面状態、形状、流速などさまざまな因子に影響される点が特徴です。

熱伝導率と熱伝達率の違いは、熱伝導率が物体内部での熱移動に関する指標であるのに対し、熱伝達率は物体と流体間での熱移動を表している点です。同じ「熱が移動する」という現象でも、固体状態の金属では熱伝導、液体状態の金属では熱伝達が原理となっています。

放射率との違い

熱放射とは物体の表面から熱が放射される現象で、放射率(Thermal Emissivity)はその強さを表しています。放射率は0から1の間で表され、放射率0は熱エネルギーを一切放射せず全ての熱を反射する完全反射体、放射率1は全ての光を完全に吸収し熱エネルギーを最大限放射する完全放射体(黒体)だと定義されています。

熱伝導率が物体内部での熱エネルギーの移動効率を表した値であるのに対し、放射率は物体の表面から熱エネルギーを放射する強さを表す値である点が違いです。なお、熱放射率は単位を持たない物理量で、計算で算出できるものではありません。

熱抵抗値との違い

熱抵抗値(Thermal Resistance)とは、物体中で熱エネルギーの移動がどれだけ妨げられるかを表す物理量です。単位はm²k/W(平方メートルケルビン毎ワット)で表され、当然数値が大きいほど熱を通しにくい物体、つまり断熱性が高い物体だと判断できます。

熱伝導率が単位厚さの材料が単位時間当たりに、単位温度差でどれだけ熱量を伝えるかを表しているのに対し、熱抵抗値は特定の物体全体が単位温度差でどれだけ熱が伝わるのをブロックするかを表しています。

一般に熱伝導率が高い材料は熱抵抗値が低く、反対に熱伝導率が低い材料の熱抵抗値は高くなる点が特徴です。

熱伝導率と温度の関係

熱伝導率は温度によって変化しますが、その影響や変化の度合いは物質により異なります。

例えば、金属の場合は一般的に温度が上がると熱伝導率は低下します。これは、温度の上昇に伴い金属元素内の自由電子が散乱し、熱エネルギーの伝導効率が悪くなるためです。一方でセラミックスやダイヤモンド、炭素繊維などの非金属の物質では、温度上昇に伴い熱伝導率が増加する場合があります。

上記のように材料の種類により熱伝導率の変化は異なるので、設計段階で使用環境も考慮して、使用条件にあった素材を選定することが重要です。

熱伝導率の求め方

次に熱伝導率の単位や計算方法、測定方法について解説します。

熱伝導率の単位

前述の通り熱伝導率の単位は、国際単位系(SI)で定められたW/(m·K)(ワット毎メートル毎ケルビン)です。これは1mの厚さを持つ物質が、その両端に1K(1度と等しい)の温度差があるとき、1㎡の断面積を通じて1秒間に伝わる熱量です。

例えば、熱伝導率が500W/(m·K)の金属の場合、1㎡当たり500Wの熱量が伝わります。一方で断熱材やガラス、プラスチックなど熱伝導率が低い物質は、1W/(m·K)未満の値を示すこともあります。

熱伝導率の単位を理解しておくと、さまざまな物質の熱的特性を定量的に評価でき、目的に合った材料選びや設計ができるでしょう。

熱伝導率の計算方法

熱伝導率は、フーリエの法則(Fourier’s Law)を用いて求められます。

フーリエの法則とは、熱エネルギーが高温部分から低温部分に移動する流れを、数学的に示す法則です。この法則では、熱エネルギーが移動する速度(熱流束)が、温度差(温度勾配)と比例関係にあることを示しています。つまり、物体内部の温度差が大きいほど熱エネルギーが早く移動します。

フーリエの法則の式は、以下の通りです。

q=−k⋅ΔT/Δx​

(q:単位面積当たりの熱流束、k:熱伝導率、Δx:熱が伝わる距離、ΔT:温度差)

これを変形すると、熱伝導率は以下の式で求められます。

k=−q⋅Δx​/ΔT

熱伝導率の測定方法

熱伝導率の測定方法には、定常状態法と非定常状態法の2つがあります。

定常状態法とは、物体に一定の温度勾配を与えて熱伝導率を測定する方法です。物体の一方を高温に、もう一方を低温に設定し、各点の温度を測定して熱伝導率を導き出します。後述する非定常状態法よりも、比較的簡単に測定できます。

非定常状態法とは、物体に熱エネルギーを与えて、温度の時間変化から熱伝導率を求める方法です。時間変化から熱拡散率αを測定し、熱伝導率を算出します。

いずれの方法でも、正確に測定するには精密機器と高い技術が必要ですが、熱的特性を詳細に解析することができます。

金属の熱伝導率

一般的に金属は、熱伝導率が高い傾向にあります。これは、金属元素内には原子間の特定の結合に束縛されずに自由に動き回る自由電子があるためです。

金属は結晶構造を持ちますが、自由電子はその間を自由に移動できます。自由電子の存在により金属は電気を伝えますが、同時に熱を伝える性質もある点が特徴です。

一方、金属以外の物質の場合、熱が伝わる仕組みは原子の振動が伝播することによるものなので、全体に熱が伝わりにくく熱伝導率が小さくなります。

また金属は種類により、熱伝導率が大きく異なる点も特徴です。銀や銅、金、アルミニウム、鉄などの金属は高い熱伝導率を有します。銀や金などの貴金属は高価であるため、工業用で用いられるのは、銅やアルミニウム、鉄などのベースメタルです。

一方で、ステンレスやチタンなどの金属は熱伝導率が低く、耐熱性や保温性に優れています。

金属の種類別の熱伝導率の詳細と、熱伝導率が高い金属の特徴・低い金属の特徴を見ていきましょう。

金属の種類別の熱伝導率

金属の種類ごとの熱伝導率の一覧は、以下の表の通りです。

金属

熱伝導率(W/m·K)

420~430

390~400

320

アルミニウム

220~240

70~90

タングステン

170

ニッケル

90

チタン

17~20

亜鉛

115

35

SUS

15〜25

なお熱伝導率は、測定条件により異なるので、あくまでも参考程度にご活用ください。

熱伝導率が高い金属の特徴

熱伝導率が高い金属には、金や銀、銅、アルミニウムなどが挙げられます。こうした金属には、以下に示す特徴があります。

  • 結晶構造に規則性がある
  • 自由電子の数が多い
  • 電気伝導率も高い
  • 延性・展性が高く加工しやすい

熱伝導率が高い金属は、熱が伝わりやすい特徴を生かして冷却材や熱交換器などに用いられています。

また加工により発生する熱が全体に伝わりやすく、熱膨張により内部応力が残ります。これにより、加工後も形状が保持されやすい、つまり加工精度を高められる点も特徴です。

熱伝導率が低い金属の特徴

チタンやステンレスなどは、熱伝導率が低い金属の代表例です。熱伝導率が低い金属の特徴には、以下が挙げられます。

  • 結晶構造が複雑
  • 自由電子の数が限られている
  • 電気伝導率も低い

熱伝導率が低い金属は、熱が伝わりにくいため、断熱材や取っ手などに活用されます。また、加工による温度変化が小さいため、溶接加工しやすい点なども特徴です。

まとめ

本記事では、熱伝導率の概要や似た物理的指標との違い、温度との関係、求め方、種類別の熱伝導率などを解説しました。

熱伝導率とは、物体内部に温度差がある場合、熱がどれだけ伝わりやすいかを表した物理量です。一般に金属の場合は温度が高くなると熱伝導率は高くなり、非金属元素の場合は低くなります。

また金属は一般的に熱伝導率が高い傾向にありますが、種類によりその値は大きく異なります。熱伝導率が高い場合と低い場合で、特徴や用途が大きく異なるので、金属を加工する際はこの点も考慮しておきましょう。

エバーロイ商事株式会社では、超硬素材選定・超硬製品開発・超硬精密加工に関するサービスを提供しています。素材開発から精密加工まで一貫したソリューションにより、お客さまのニーズやお悩みをスムーズに解決します。今回ご紹介した熱伝導率に限らず、金属特有の特徴を考慮しながら金属加工を行いたい場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事を監修した人

エバーロイ商事株式会社

大久保 文正

エバーロイ商事株式会社

昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
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