produced by 株式会社共立合金製作所 / エバーロイ商事株式会社

English Chinese

お電話からのお見積もり・お問い合わせ

0798-26-3606

技術情報・技術コラム

ヤング率(縦弾性係数)とは? 各用語の意味や求め方、素材ごとの目安を解説

超硬素材の選定・開発から超硬加工のことならエバーロイへご相談ください

素材を加工するに当たっては、ヤング率(縦弾性係数)をはじめとする素材の物理的性質を理解しておくことが重要です。特に建築物や機械部品の設計や素材選定の際には、ヤング率を考慮しておくことが欠かせません。

そこで本記事では、ヤング率(縦弾性係数)の概要や求め方、素材ごとのヤング率の目安などを網羅的に解説します。ヤング率への理解を深めたい方は、参考にしてください。

ヤング率(縦弾性係数)とは?

ヤング率とは

ヤング率とは、素材の弾性特性を表す値です。一定方向の応力とそれに対する変化の受けやすさを表す指標で、縦弾性係数とも呼ばれています。単位はパスカル(Pa)で表され、詳しくは後述しますが引張応力に対するひずみの比率と定義されます。

ヤング率は物体がどれだけ剛性が高く、変化しにくいかを表すものです。金属やセラミックなどの硬度のある素材はヤング率が高く、強い外力に対しても物体の形状を維持する力が働きます。

ただし、ヤング率が高いからといって万能な素材というわけではありません。ヤング率が高い素材は剛性が高い一方で、脆い・欠けやすいなどの性質も併せ持ちます。

またヤング率が低いものほど柔軟性が高く、外力に対して変形しやすいことも特徴です。ヤング率が低い素材は、大きな外力が加わっても欠けたり割れたりしないため、衝撃吸収能力に優れています。ヤング率が低い代表的な素材には、木材やゴムなどが挙げられます。衝撃吸収能力に優れている一方で、剛性が低くたわみが発生しやすいため、機械的な安定性が求められる場面での使用には適していません。

ヤング率について理解するには、以下に挙げる用語への理解が欠かせません。

  • 弾性:物体が外力を受けて変形した後、外力が取り除かれた際に元の形に戻ろうとする物理的性質
  • 剛性:物体が外力を受けた際の変形しにくさ
  • 応力:物体に外力が加えられた際、内部に生じる単位面積当たりの力
  • ひずみ:物体に外力が加えられた際に生じる変化の割合(変位)を表す値
  • ポアソン比:素材に外力が加えられたとき、縦方向の変形(縦ひずみ)に対する横方向の変形(横ひずみ)の割合

ここからは、それぞれの用語について詳しく説明していきます。

弾性

弾性(elasticity)とは、物体が外力を受けて変形した後、外力が取り除かれた際に元の形に戻ろうとする物理的性質です。素材がどれだけ変化しやすいか、またどれだけ元に戻りやすいかを表す値だと理解しておくと良いでしょう。素材の弾性限界を超えた場合、形状が元に戻らず永久変形を起こす可能性があり、設計時には加わる外力と弾性の両方を考慮しておくことが重要です。

弾性が高い素材は外力を受けても変形しにくく、力を取り除くと元の状態に戻る性質が強く、反対に弾性が弱い素材は外力により大きく変形しやすい特徴があります。弾性は、その素材の種類や分子構造、化学的結合の特徴、温度などのさまざまな要素により左右されます。

この弾性を定量的に示す指標の一つが、ヤング率です。外力を加えて物体を変化させるのに必要な大きさだと認識しておくと良いでしょう。

剛性

剛性とは、物体が外力を受けた際の変形しにくさを表しています。素材の選定に用いられるだけでなく、構造物の強度や安定性を評価するために重要な指標です。一般に、剛性が大きい物質ほど変形しにくく、剛性が小さいものほど変形しやすくなります。

この剛性を定量的に表しているのが、ヤング率です。一般に、ヤング率が大きい素材ほど、変形しにくく剛性が高くなります。

なお、剛性とよく混同されがちな概念に「強度」があります。強度とは、物体が破断されるまで耐えられる最大の外力です。剛性と強度は、ともに物体の外力への特性を表すものですが明確に異なるので、区別しておきましょう。

応力

応力とは、物体に外力が加えられた際、内部に生じる単位面積当たりの力です。「力/面積」で表される物理的指標で、外力に抵抗する力だと認識しておくと良いでしょう。応力が高いと、それだけ物体に負荷がかかっている状態だといえます。

応力は外部からの力の大きさだけでなく、剛性や結晶構造の変化、温度変化などさまざまな要素に左右されます。応力は、外部から与えられる力が取り除かれれば、それと同時になくなる点も把握しておきましょう。

ヤング率は、この応力と後述するひずみの関係を定量化したものです。計算方法は後ほど詳しく解説しますが、ヤング率は応力をひずみで割った値として定義され、素材の弾性変化のしやすさを示しています。

ひずみ

ひずみとは、物体に外力が加えられた際に生じる変化の割合(変位)を表す値です。変形量を外力と平行な方向の長さで割った値なので、単位のない無次元量です。

ひずみには、大きく分けて縦ひずみ・横ひずみ・せん断ひずみの3つがあります。それぞれ、物体を押した際の荷重方向の変形、荷重方向に直行する方向の変形、せん断された際に発生するひずみを表しています。

ヤング率とは、ここで紹介したひずみと応力の比例関係を表した物理量です。

ポアソン比

ポアソン比とは、素材に外力が加えられたとき、縦方向の変形(縦ひずみ)に対する横方向の変形(横ひずみ)の割合を表すものです。「ポアソン比=横ひずみ/縦ひずみ」で表されます。ひずみが単位を持たない無次元量であるため、ポアソン比も同じく無次元量です。

金属のポアソン比は約0.3、荷重により体積が変形しない素材や天然ゴムなどでは、0.5程度です。荷重に対する変形方向が方向によらない等方性弾性体の場合、ヤング率とポアソン比の関係は、以下のように表されます。

【ヤング率とポアソン比の関係】

G=E/2(1+ν)

(G:横弾性係数、E:ヤング率、ν:ポアソン比)

ヤング率の求め方

ヤング率を求めるには、単位と計算方法について理解する必要があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

ヤング率の単位

ヤング率の単位は、面積当たりの力を表す「Pa(パスカル)」が用いられます。1Paは1㎡当たりに1ニュートンの力が加わるときの圧力(N/m²:ニュートン毎平方メートル)です。ヤング率の値を表す数字は非常に大きくなることがあるため、実際にはMPa(メガパスカル:10⁶ Pa)や、GPa(ギガパスカル:10⁹ Pa)などが用いられます。

各単位の関係は以下の通りです。

  • 1Pa = 1N/m²
  • 1MPa = 1N/mm²
  • 1GPa = 1,000N/mm²

その他、1㎠の面積に対して、1kgの重量が垂直にかかるときの圧力を表すkgf/cm²(重量キログラム毎平方センチメートル)などの単位が用いられるケースもあります。

ヤング率の計算方法

ヤング率は、フックの法則に基づいて計算されます。フックの法則とは、物体が弾性域内で変形するとき、応力とひずみが比例関係を示す法則です。ヤング率の計算方式は、σ(シグマ)を応力、ε(イプシロン)をひずみ、Eをヤング率とすると以下の通りです。

σ=E⋅ε

例えば金属片に外力を加えた際、ひずみが弾性域内にある内は、外力を取り除くと金属片は元の形状に戻ります。ある素材に一定の力を加えて応力が1000MPa、ひずみが0.001と測定された場合、ヤング率は1,000GPa(1,000,000 MPa)です。

この計算式で求められるヤング率が高いほど、硬い素材であり、反対に低い素材ほどしなやかな性質があると判断できます。

主な素材のヤング率の目安

最後に、木材・金属・コンクリートのヤング率の目安をご紹介します。

金属

一般に金属はヤング率が高く、荷重に対する変形量が少ない点が特徴です。しかしながら、先述した表にまとめているように、金属ごとにヤング率は大きく異なります。金属を用いる際は、こうした点を踏まえて特性に応じた設計を行いましょう。

金属の種類ごとのヤング率の目安は以下の通りです。

素材

ヤング率

アルミ

70,000〜210,000N/mm²

亜鉛

110,000N/mm²

真鍮

100,000N/mm²

鋳鉄

100,000〜180,000N/mm²

130,000N/mm²

15,000〜20,000N/mm²

ステンレス

190,000〜200,000N/mm²

チタン

100,000N/mm²

タングステン

400,000N/mm²

モリブデン

330,000N/mm²

木材

木材の場合は、繊維方向と繊維と直交する方向でヤング率が異なる点が特徴です。繊維方向の方がヤング率が高く、直交する方向と比較して約10倍の差があります。

木材の種類によりヤング率が変わるのはもちろん、気温や湿度にも影響されます。木材を素材に用いる際は、さまざまな要素に影響を受ける点は把握しておきましょう。

木材の種類ごとのヤング率の目安は以下の通りです。

素材

ヤング率

スギ(繊維方向)

7,000〜7,500N/mm²

スギ(繊維の垂直方向)

500〜600N/mm²

マツ(繊維方向)

7,000〜7,500N/mm²

マツ(繊維の垂直方向)

500〜600N/mm²

ベイツガ

10,000N/mm²

カラマツ

10,000N/mm²

アカマツ

11,000N/mm²

コンクリート

コンクリートのヤング率は、一般的なヤング率の計算方法ではなく、以下の式で計算されます。

Ec(ヤング係数)= 3.35×10⁴×(γ/24)²×(Fc/60)⅓

式中に出てくるFcとは、強度のことです。つまりコンクリートは、強度が大きければヤング率も大きくなります。

なお、一般的なコンクリートのヤング率は、約22,000〜23,000N/mm²です。

まとめ

本記事では、ヤング率の概要や求め方、主な素材のヤング率について解説しました。

ヤング率とは、素材の弾性特性や剛性を示す物理的指標で、建築物や機械部品の構造設計や素材選定する際に重要視されます。弾性・剛性・応力・ひずみ・ポアソン比などの物理的パラメーターと密接な関係があるので、それぞれ何を表すものなのか、ヤング率とどのような関係があるのかを把握しておきましょう。

ヤング率は金属、木材、コンクリートでそれぞれ大きく異なります。また同じ金属、木材であっても種類により大きな差があるので、素材に用いる際はこれらを理解しておきましょう。

エバーロイ商事株式会社では、超硬素材選定・超硬製品開発・超硬精密加工に関するサービスを提供しています。素材開発から精密加工まで一貫したソリューションを提供し、お客さまのニーズや課題を解決に導きます。ヤング率に関してお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

超硬素材の選定・開発から超硬加工のことならエバーロイへご相談ください

この記事を監修した人

エバーロイ商事株式会社

大久保 文正

エバーロイ商事株式会社

昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。

超硬素材・超硬加工 ソリューションナビを運営するエバーロイは、
素材選定・開発~精密加工、完成品提供までの一貫したソリューション提供により、
皆さまの課題を解決します。

ご相談・お問い合わせ 技術資料ダウンロード