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技術情報・技術コラム

バレル加工とは?4種類の研磨方式やメリット・デメリットを解説

超硬素材の選定・開発から超硬加工のことならエバーロイへご相談ください

金属やプラスチック、ガラスの加工方法にはさまざまな方法があります。その内の一つが、バレル容器を用いて製品・部品の表面を研磨するバレル加工です。

バレル加工を活用するにあたっては、概要やどのような種類があるのか、メリット・デメリットを把握しておくことが重要です。しかし専門的な加工技術であるため、詳しく理解できていない人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、バレル加工の概要や4種類の研磨方式、メリット・デメリットについてご紹介しますので、加工方法を選ぶ際の参考にしてください。

バレル加工とは?

バレル加工とは

バレル加工とは、製品・部品の表面を研磨する加工方法の一つです。バレルと呼ばれる円筒状の容器に、ワーク(被研磨物)とメディア(研磨石・研磨材)、コンパウンド(研磨助剤)などを入れます。この状態で回転や振動を与えると、摩擦により製品・部品の表面が滑らかになります。

バレル加工が用いられるのは、主に以下のようなシーンです。

  • 製品のバリ取り
  • R付け
  • 表面の光沢仕上げ
  • 平滑仕上げ
  • スケール取り
  • 電子機器をはじめとする精密製品の仕上げ

バレル加工は大きく分けて、乾式(ドライバレル)と湿式(ウェットバレル)の2種類があります。

乾式バレル加工は、液体を使用せずに研磨剤やコンパウンドなどを用いて加工する方法です。湿式と比較して研磨力は劣るものの、研磨剤に与えるダメージは少なく、より精度の高い加工を行えます。

湿式バレルとは、水などの液体を使用しながら加工する方法です。乾式バレル加工より研磨力が高い点が特徴で、チタンのバリ取りやエッジのラウンド加工などに用いられています。

バレル加工の4種類の研磨方式

バレル加工には、以下の4種類の研磨方式があります。

特徴

メリット

デメリット

流動式

底部に取り付けられた回転盤が洗濯機のように回転

●  大量生産できる

●  均一に仕上がる

●  繊細な調整が難しい

回転式

バレル自体が回転する

●  汎用性が高い

●  生産、メンテナンスのコストが安い

●  加工時間が長い

●  研磨条件の設定が難しい

振動式

高頻度の振動を与えて摩擦を起こして研磨する

●  振動の程度を細かく調整できる

●  熱の発生が少ない

●  加工時間が長い

遠心式

バレル容器を自転・公転させる

●  他のバレル加工と比較して研磨力が強い

●  加工時間が短い

●  熱が発生しやすい

●  コストがかかる

●  大型のワークは加工しづらい

それぞれの研磨方式の概要をみていきましょう。

流動式

流動式バレル加工とは、底部に取り付けられた回転盤が洗濯機のように回転し、内容物が流動しながら擦れ合う加工方法です。

流動式では、大量の被研磨物を一度に研磨できる他、ムラなく均一に仕上げられる点が特徴です。加工にかかる総時間を短縮できるので、大量生産に向いています。

ただし、研磨槽の回転が一方向に固定されているため、繊細な調整が難しい点がデメリットです。

回転式

回転式バレル加工とは、バレルを回転させて内容物同士を摩擦させる加工方法です。先述した流動式では底部の回転盤が回るのに対し、回転式はバレル(容器)自体が回転します。

回転式は汎用性が高く、金属やプラスチック、ガラスなどさまざまなワークに対応できることが特徴です。また、加工やメンテナンスにかかるコストも安く済みます。

一方で、他のバレル加工方法と比較して加工時間が長くなる傾向にあります。また、研磨条件の設定が難しい点も把握しておく必要があるでしょう。

振動式

振動式バレル加工とは、バレル内にワークと研磨剤を入れ、高頻度の振動を与えて摩擦を起こして研磨する加工方法です。大型部品の研磨に適したボックスタイプと、バレル内に選別機構を設定できるサークルタイプがあります。

振動式は振動の程度を細かく調整できるため、細部まで均一に研磨できます。また、熱の発生が少ないため、熱に弱いワークを加工する際にも適した加工方法です。

振動で研磨するという性質上、加工時間は長くなる傾向にあります。

遠心式

遠心式バレル加工とは、バレル容器の自転・公転を組み合わせた加工方法です。2種類の回転により遠心力が増しているため、他のバレル加工と比較して研磨力が強く、短い加工時間で重切削から高度な仕上げまで対応できます。

ただし、研磨力が高いがゆえにワークや研磨剤が熱を持ちやすく、熱に弱いワークを加工するには向いていません。加えてバレル容器のサイズが限られているので、大型のワークを加工するのも難しいです

バレル加工のメリット

バレル加工のメリットは、以下の通りです。

  • 一度に多くのものを研磨できる
  • 仕上がりが安定しやすい
  • 複雑な形状にも対応できる

それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。

一度に多くのものを研磨できる

バレル加工は、複数の製品を同時に研磨できるため、生産効率が高いのが大きな特徴です。

研磨材と共に複数の部品をバレル容器に投入し、回転や振動を加えることで、部品同士や研磨材との摩擦が均等に作用し、一括で表面を磨き上げます。

この加工プロセスにより、手作業では難しい小さな部品や複雑な形状の製品でも、効率よく均一に研磨できます。また、短時間で大量の部品を処理できるため、生産コストが抑えられる点もメリットです。

バレル加工は、大ロットで製品・部品を研磨したい場合に向いています。

仕上がりが安定しやすい

バレル加工のメリットの一つに、仕上がりが安定する点も挙げられます。

バレル加工は、研磨材と製品がバレル内で均等に接触し、機械的な動作で研磨が行われるため、作業者の技術に依存せず常に一定の品質を維持できます。このため、手作業では難しい複雑な形状や細部まで均一に磨き上げることが可能です。

大量生産時でも同様に、ばらつきの少ない高品質な仕上がりが実現するので、精密さが求められる製品の生産に適しています。

複雑な形状にも対応できる

バレル加工は、複雑な形状にも対応できる点がメリットです。部品と研磨剤を一緒に入れ、回転数や振動数を調整しながら摩擦を発生させて研磨を行うため、他の方法では加工が難しい複雑な対象でも均一な仕上がりを実現できます。

また、バレル加工では鏡面仕上げも行えます。鏡面仕上げとは、金属素材の表面を鏡のように滑らかで光沢のある状態に仕上げる加工方法です。鏡面加工をバレル加工で行う場合、仕上がりのばらつきが少なく、細かい寸法や複雑な形状にも対応できます。

バレル加工のデメリット

バレル加工には、先述したメリットだけでなく、以下に挙げるデメリットもあります。

  • 一度に多くのものが駄目になるリスクがある
  • 小さな傷やへこみができる場合がある
  • 大きすぎるものは研磨できない

それぞれの点について詳しくみていきましょう。

一度に多くのものが駄目になるリスクがある

バレル加工は複数の部品を一度にまとめて加工できますが、一度に多くのものが駄目になるリスクがある点には注意しなければなりません。

バレル加工を行う際、部品同士がバレル内で摩擦や衝突を繰り返すため、設定を間違えると、被加工物が全て駄目になってしまう可能性があります。

そのため、こうしたリスクがあることを踏まえた上で、対策をしておく必要があります。例えば、摩擦や衝突による部品の損傷を避けるために、加工時間や回転速度、使用する研磨剤の種類など加工条件を精密に設定するのが有効です。

また、万が一加工に失敗しても被害が最小限で済むように、まずは少量でテスト加工をして、問題なければ大ロットで生産するなどのリスクヘッジも行ってください。

小さな傷やへこみができる場合がある

バレル加工は一度に大量の部品が研磨されるため、処理中に小さな傷やへこみができる場合がある点がデメリットです。表面が柔らかい素材や硬度が低い素材は、特に傷やへこみが付きやすいため、注意しなければなりません。

小さな傷やへこみは見た目に影響を与えるのはもちろん、部位の性能や耐久性にも影響を与える可能性が考えられます。

このような状態を避けるために、どのようなバレル容器を用いるかは慎重に検討しましょう。バレル容器内に仕切りがあれば、製品同士の摩擦や接触を防げるため、傷やへこみも付きづらくなります。

業者に委託する場合は、どのような条件でバレル加工を行うのか、機械には何を用いるのかを事前に確認しておきましょう。

大きすぎるものは研磨できない

バレル加工は、バレル容器に入れて研磨するという特殊な加工方法です。そのため、大きすぎるものは研磨できない点には注意しなければなりません。

バレル加工では主に、小型から中型の部品の研磨を対象としています。容器内のスペースには限りがあり、ある一定以上のサイズの部品だと効率的に研磨できなくなってしまいます。大きい部品を無理やり入れると、機械が破損したり精度に悪影響を与えたりする可能性も考えられるでしょう。

大きすぎるものは、バレル加工ではなくバフ加工のように容量に制限のない加工方法を選択するといいでしょう。

まとめ

本記事では、バレル加工の概要やその種類、メリット・デメリットなどを解説しました。

バレル加工は、バレル容器を用いて製品や部品の表面を研磨する加工方法です。流動式・回転式・振動式・遠心式の4つの種類に分けられます。

バレル加工は大量に研磨できる分、小さな傷やへこみが尽きやすかったり、容量の問題で大きすぎるものは研磨できなかったりするなどには注意が必要です。しかし、作業員のスキルや経験によらず仕上がりが安定しやすい点や、複雑な形状にも対応できる点などがメリットです。部品を研磨する際は、バレル加工を検討してみましょう。

エバーロイ商事株式会社では、超硬素材選定・超硬製品開発・超硬精密加工などのサービスを提供しています。素材開発から精密加工まで一貫したソリューションを提供することで、お客さまのニーズや課題をスムーズに解決します。バレル加工に関してお悩みの方は、ぜひ気軽にお問い合わせください。

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この記事を監修した人

エバーロイ商事株式会社

大久保 文正

エバーロイ商事株式会社

昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。

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