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技術情報・技術コラム

巻線とは?種類や製作方法、用途を解説

銅線をコイル状に巻いた巻線は、電流を流すと磁場を発生させ、エネルギーの伝達・変換する重要な役割を果たします。モーターやトランス、発電機など幅広い用途で用いられており、インフラを支えているといっても過言ではありません。

一口に巻線といっても、その種類や性質はさまざまであり、材質や製作方法も異なります。巻線を活用するには、こうした点も把握しておくことが重要です。

そこで本記事では、巻線の概要や種類、製作方法、用途などを網羅的に解説します。

巻線とは?

巻線とは、電気回路や電磁誘導を用いて発生する磁力線を利用するための銅線を、コイル状に巻いたものです。巻線は、電流が流れることで磁場を生成し、その磁場を利用してエネルギーの伝達・変換する役割を担います。主に、電流の変化に応じて誘導起電力が生じる現象である「インダクタンス」を利用するために用いられ、トランス(変圧器)・モーター・リレーなどの用途があります。

巻線の設計で重要なのは、材質と巻き方です。巻線の種類には、絶縁性に優れたエナメル線、ガラスや糸などを巻き付ける横巻線、乾性油などの天然樹脂を皮膜した油性エナメル線などがあります。それぞれで物理的性質や特徴は異なるので、活用する上ではこれらを正確に把握しておくことが重要です。

また、巻き方にも高速回転する軸に銅線を巻き付けるスピンドル方式と、固定された円盤状のコアに対してノズルが回転しながら銅線を巻き付けるフライヤー方式などがあります。

巻線の種類

巻線には、以下の種類があります。

  • エナメル線
  • 横巻線
  • 油性エナメル線

それぞれの種類の概要や特徴を詳しく解説します。

エナメル線

エナメル線とは、銅線を絶縁体のエナメルの皮膜で覆った巻線です。詳しくは後述しますが、ポリウレタン線・ポリエステル線・ポリエステルイミド線・ホルマール線などいくつかの種類があります。

エナメル線の特徴は以下の通りです。

  • 電気を通しにくい
  • 耐熱性が高い
  • はんだ付けに適している種類がある

まず挙げられるのが、絶縁性が高く電気を通しにくい点です。主に産業用のコイルやモーター、トランスの巻線として広く用いられています。

耐熱温度は使用される絶縁皮膜の種類によって異なりますが、耐熱性が高い点も特徴の一つです。巻線が高温になると変形して摩擦が生じやすくなり、絶縁体がすり減ってショートを引き起こすため、モーターが故障しやすくなります。高温環境下でも安定した動作をするためには、高い耐熱性が必要です。

またエナメル線の種類にもよりますが、はんだ付けしやすく加工が容易な点も特徴です。はんだ付けとは、高熱で融解させたはんだを用いて電子部品を導電性の接合面に固定する技術であり、電子機器が正しく作動するためには欠かせません。エナメル線のうち、特にポリウレタン線がはんだ付けに適しています。

一方で、高性能である分、他の材料と比較してコストが高い点は把握しておきましょう。

横巻線

横巻線とは、銅線にガラスやフィルム、紙、糸などの絶縁材料を被覆した巻線です。銅線に沿って被覆材をらせん状に巻き付ける構造が特徴的です。

紙巻線や転位紙巻線、複合紙巻線、テープ巻線などがあり高圧モーターや車両用モーター、変圧器などに用いられています。

油性エナメル線

油性エナメル線とは、乾性油などの天然樹脂を被覆したエナメル線の一種です。現代では先述したエナメル線が主流ですが、かつては油性エナメル線の方がよく製作されていました。

エナメル線の種類

先述した巻線の一種であるエナメル線は、さらに細かく以下の種類に分けられます。

  • ポリウレタン線
  • ポリエステル線
  • ポリエステルイミド線
  • ホルマール線

エナメル線のそれぞれの種類を詳しく見ていきましょう。

ポリウレタン線

ポリウレタン線(UEW:Polyurethane Enameled Copper Wire)とは、ウレタン系樹脂のワニスで銅線を覆ったエナメル線です。マグネットワイヤとも呼ばれています。

ポリウレタン線は高い耐薬品性に加え、高周波の電気特性にも優れているエナメル線です。リレーコイルや通信用コイル、小型モーター、小型トランスなどの用途で広く使用されています。

またポリウレタン線は、絶縁皮膜をはがさずに直接はんだ付けが可能であり、そうでないタイプと比較して製造プロセスを効率化でき、製品の大量生産に向いているのも特徴です。

一方で注意しなければならないのは、他のエナメル線と比較して許容温度が低い点です。銅線に多層に巻いた場合、内部や熱がこもりやすくなり、通電により巻線自体も発熱します。過熱により性能低下を招く可能性があるため、冷却や放熱など十分な対策が求められます。

ポリエステル線

ポリエステル(PEW:Polyester Enameled Copper Wire)は、銅線の表面に絶縁皮膜としてポリエステル樹脂を焼き付けたタイプのエナメル線です。

特に耐熱性(155度)に優れており、耐熱クラスはFクラスに分類されます。耐熱クラスとは、絶縁材料が耐えられる最高温度を表す指標で、温度に応じてY種・A種・E種・B種・F種・H種・N種・R種・250などに分けられます。ポリエステル線は高温環境下での使用に適しており、汎用モーターやトランス、ソレノイド、リレーコイル、携帯用発電機などが主な用途です。

一方でポリウレタン線と異なり、絶縁皮膜がある状態ではんだ付けはできません。皮膜剥離溶剤であるデペントなどを用いて、別途皮膜をはがす必要があります。

ポリエステルイミド線

ポリエステルイミド線(EIW:Polyester-Imide Enameled Copper Wire)とは、銅線の表面をポリエステルイミド樹脂で覆ったエナメル線です。耐熱クラスはH種(最高使用温度180度)に分類され、特に高温環境下での使用に優れた特性を有します。

また電気的・機械的・化学的特性にも優れており、耐熱性が求められるモーターやトランスなどに用いられます。

一方で、はんだ付け性(金属表面に対し、はんだ付けする際の接合性の良さを表す指標)が悪く、通常ははんだ付けはできません。加えて絶縁皮膜表面に微細なひび割れ(クレージング現象)が生じる可能性もあります。絶縁性が低下する恐れがあるため、使用環境や条件に合わせて慎重に取り扱うことが重要です。

ホルマール線

ホルマール線(PVF:Polyvinyl Formal Enameled Copper Wire)は、絶縁皮膜としてポリビニルホルマールをベースとした樹脂を焼き付けたエナメル線の一種です。

ホルマール線は加工しやすい他、耐薬品性・耐加水分解性・耐溶剤性に優れている点が特徴に挙げられます。また、機械的強度も高く厳しい条件下にある屋外機器に用いることが可能です。

一方で耐熱クラスはA種(許容最高温度105度)と低い部類に属するため、高温環境下で使用する際は十分注意する必要があります。

巻線の方法

巻線の製作方法は、大きく分けてスピンドル方式とフライヤー方式の2つです。それぞれの製作方法の概要や特徴、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。

スピンドル方式

スピンドル方式とは、高速回転する軸に銅線を巻き付けて巻線を製作する方法です。軸回し方式とも呼ばれます。

この方式では、銅線を高速回転する軸に均一に巻き付けられるため、製作効率が高い点が特徴です。また巻線の品質を一定に保てるため、高い精度が要求される電動機やトランス、モーター制御装置、電源装置などに用いられます。

フライヤー方式

フライヤー方式は、固定された円盤状のコアに対してノズルが回転しながら銅線を巻き付ける方法です。主にボビンやモーターの回転子などの巻線の製作に広く使用されています。

この方式の特徴は、ノズルが回転しながら電線を引っ張り、強い張力を加えながら巻き付けるため、巻線がしっかりと密着し高品質な仕上がりになる点です。フライヤー方式は手作業でも対応可能であり、大規模な設備を必要とせずとも巻線を製作できます。

またスピンドル方式のように軸が回転する方式とは異なり、コアを固定させた状態でノズルが回転するため、複雑な形状の巻線にも対応可能です。

巻線の用途

巻線は電気機器や電子機器において重要な役割を果たしており、主に以下に挙げる用途があります。

  • トランス(変圧器)
  • モーター
  • リレー

トランス(変圧器)とは、電圧を変換する装置です。コアに巻かれた一次巻線と二次巻線の間に電磁誘導が生じることで、電力が効率的に変換されます。これにより、送電時にエネルギーの損失を限りなく抑え、無駄のない電力供給が可能です。

モーターは電気エネルギーを機械エネルギーに変える装置です。巻線に電流が流れると磁場が生成され、この磁場がローターを回転させる力を発生させます。巻線の巻数や半径は、モーターの性能や効率に直接的に影響を与えるため、設計が重要となります。

継電器とも呼ばれるリレーとは、電気回路のオンオフを切り替える装置です。巻線に電流が流れると磁力が発生し、その磁力により可動接点が引き寄せられ、接点が切り替わり電流を制御します。

まとめ

巻線とは、銅線をコイル状に巻いたものです。電流を流すと磁場を発生させ、エネルギーの伝達・変換するため、電子機器や電気機器が正しく作動するには欠かせない部品となっています。

巻線には、銅線を絶縁体で覆ったエナメル線や紙・フィルム・ガラスなどで覆った横巻線、乾性油などの天然樹脂を被覆した油性エナメル線などがあり、それぞれで性質が異なります。特にエナメル線は、ポリウレタン線・ポリエステル線・ポリエステルイミド線・ホルマール線などさまざまな種類があるので、活用するに当たってその性質を把握しておくことが重要です。

エバーロイ商事株式会社では、超硬素材選定・超硬製品開発・超硬精密加工に関するサービスを提供しています。素材開発から精密加工まで一貫したソリューションを提供しており、お客さまの課題やニーズを的確に把握し解決に導きます。巻線に関してお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を監修した人

エバーロイ商事株式会社

大久保 文正

エバーロイ商事株式会社

昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。

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