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技術情報・技術コラム

電磁鋼板とは? 特徴や用途などを解説

現代社会は、電力なしには産業も家庭も機能しなくなるほど依存しており、重要なライフラインとなっています。そんな電力を仕事や生活に生かすために、必要不可欠なのが「電磁鋼板」です。

 

普段の生活で電磁鋼板を意識する機会はそうありませんが、実は発電機や変圧器、モーターなど、電気エネルギーに関わるあらゆる機器の心臓として活躍しています。

 

私たちの生活を支える電磁鋼板について、特徴や用途、種類から製造方法に至るまで紹介します。

 

電磁鋼板とは

電磁鋼板とは?

電磁鋼板とは、電気を流して強い磁力を得るための鋼材です。鉄に微量の合金元素を添加することで、より多くの磁力線を通せる(より強い磁力が伝わる)ように機能性を高められているのが特徴です。

 

加えて、鉄に微量のケイ素やアルミニウムなど安価な素材を添加して製造するため、コストが低く、コスパに優れる素材でもあります。

 

効率良く磁力を伝えられると、さまざまな電気機器の効率化や出力アップ、小型化などの実現が可能です。

 

例えば、モーターや発電機、変圧器などの鉄心材料として、電磁鋼板は広く使用されています。ちなみに鉄芯材料とは、電磁石の原理でコイルに挿入することで、磁力を高める役割を果たす物のことを指します。そのため電磁鋼板の性能向上によって、家電製品の小型化や電気自動車の出力アップなど、さまざまな恩恵が生まれる重要な素材です。

 

また電磁鋼板の性能は、使用される合金元素や添加量・割合によって異なります。元素ごとの特徴は下記の通りです。

 

  • ケイ素(シリコン):一般的な合金元素。磁気特性の向上やエネルギー損失を低減させる
  • アルミニウム:腐食耐性や塑性(元の形状に戻らない性質)改善の効果がある
  • マンガン:強度と硬度を向上させる

 

電磁鋼板は、身の回りのあらゆる場面で使用されており、まさに現代社会になくてはならない存在だといえます。

 

電磁鋼板の種類

 

電磁鋼板は、磁気特性の方向性によって「方向性電磁鋼板」と「無方向性電磁鋼板」の2種類に分けられます。それぞれ、どのような特徴があるのか解説します。

 

方向性電磁鋼板

 

方向性電磁鋼板は、特定方向にのみ磁力が向くよう設計されているのが特徴です。鉄の磁化しやすい結晶の向きをそろえることで、決まった方向にのみ磁力が向かうようになっています。

 

この特性は、特定方向へ磁気の流れが集中する電力用変圧器や配電用変圧器などに役立ち、方向性電磁鋼板を使用することで、供給された電力を効率良く活用できます。

 

無方向性電磁鋼板

 

無方向性電磁鋼板は、ほぼ全ての方向に対して均一に磁力が向かうよう製造されているのが特徴です。

 

あらゆる方向に磁化しやすいことから、特にモーターを安定的に稼働させるのに役立ちます。モーターは絶えず回転しているため、磁気の方向が常に変化し続けています。もしあらゆる方向へ磁力を向けることができなければ、動作が不安定になり、効率的に動作できません。

 

モーターは、自動車やパソコン、エアコンの室外機、産業用ロボットなど幅広い分野で使用されているため、無方向性電磁鋼板は生活を支える基板になっているといえるでしょう。

 

無方向性電磁鋼板の性能が高いほど、電力を磁力に変換する効率がアップするため、消費電力の節約や駆動パワーのアップなど、効率的なエネルギー利用が可能になります。

 

特に電気自動車やハイブリッド車の普及に伴い、高性能な無指向性電磁鋼板の需要が増加しています。

 

電磁鋼板の特徴

 

電磁鋼板の特徴として、「鉄損の低減」と「透磁率の高さ」の2つが挙げられます。どちらも効率的にエネルギーを活用するために役立っていますが、なじみのない方が多いでしょう。それぞれどのような特徴なのか解説します。

 

鉄損の低減

 

電磁鋼板の特徴の一つは、鉄損と呼ばれるエネルギー損失を低減できることです。鉄損とは、電気エネルギーから磁気エネルギーへの変換時に発生する損失のことで、熱として放出されてしまうエネルギーの無駄になります。

 

例えば、ドライヤーのコンセントが熱くなったり、スマートフォンのバッテリーが熱くなったりするのも、鉄損によるものです。

 

電磁鋼板は、鉄損を小さくするよう設計されており、特殊な合金組成や製造方法によって、通常の鉄よりも大幅に減らせます。そのためモーターや変圧器など、電気機器の省エネや性能向上に貢献しています。

 

ちなみに、鉄損には下記の2種類がありますが、電磁鋼板はどちらの損失も低減可能です。

 

  • ヒステリシス損:磁化の向きを変える際に発生する損失
  • 過電流損:過度な電流による損失

 

性能の高い電磁鋼板ほど鉄損の低減率が高く、高性能・省エネな電気機器を製造できます。

 

例えば、電気自動車のモーターに高性能な電磁鋼板を使用すれば、エネルギーを効率的に動力へ変換でき、走行距離のアップ・燃費の向上などが期待できます。

 

透磁率の高さ

 

電磁鋼板のもう一つの特徴は、透磁率が高く「磁力を効率良く利用できる」ことです。

 

そもそも透磁率とは、物質が磁界をどれだけ通しやすいかを示す性質です。透磁率が高いほど、より多くの磁束を通せます。磁界・磁束の概要は、下記の通りです。

 

  • 磁界:磁石の周りに存在する磁力の領域
  • 磁束:磁界の中を通る磁力の量

 

つまり透磁率が高いほど、エネルギーを効率良く利用できます。電磁鋼板は、磁力にとっての車線の多い大通りのようなもので、多くの磁力を無駄なく伝えられます。

 

例えば、モーターならより強力な回転力を生み出せ、変圧器なら変換効率の高まりから電力損失を減らすことが可能です。鉄損の低減と同じく、電気機器の性能向上・省エネ化が実現します。

 

電磁鋼板を製造する方法

 

電磁鋼板は、鋼に圧延(熱間圧延・冷間圧延)と熱処理(焼鈍)を施すことで製造され、でき上がった電磁鋼板を使用製品の形状に加工して出荷されます。

 

詳しい製造方法は、下記の通りです。

 

  1. 熱間圧延:鋼片を、再結晶温度以上の温度で圧延する
  2. 冷延圧延:特に熱を加えない環境で、薄い鋼板に圧延する
  3. 焼鈍(1):高温状態を保持した後に、ゆっくりと冷ますことで、圧延による歪を取り除く。無方向性電磁鋼板の場合は、鋼板面の結晶方位がランダムになるよう温度条件などを制御する
  4. 焼鈍(2):方向性電磁鋼板のみ実施。焼鈍(2)により、優れた磁気的性質を持つ結晶だけを成長させて、方向性を持たせる
  5. 加工:電磁鋼板が完成したら、製品に合わせて加工を施し、コイルと組み合わせて納品する

 

熱間圧延や焼鈍などの工程で、鉄に含まれる結晶の向きを制御することで、磁気特性の向上や指向性を持たせています。

 

電磁鋼板の用途例

 

電磁鋼板の用途は多岐にわたりますが、主に「変圧器」「モーター」「発電機」「電磁石」の4つに加工され、幅広い製品で使用されています。どのような用途があるのか、それぞれ解説します。

 

変圧器

 

電力の変換・配電に使用される変圧器(トランス)に、コイルの一部として電磁鋼板が使用されています。

 

変圧器は、電圧を調整するための機械です。発電所や変電所から送られてくる電気は電圧が高く、家庭では使用できないため、変圧器を通して低い電圧に変換されています。

 

変圧器は、2つのコイルの巻数を変えることで、交流電流の電圧を変更する仕組みです。この際にエネルギーを無駄にしないためには、透磁率が高く鉄損の小さい素材が必要になるため、電機鋼板は大切な役割を担っています。

 

モーター

 

電気エネルギーを機械的な運動エネルギーに変換するモーター(電動機)にも、電磁鋼板を用いたコイルが使用されています。

 

モーターは、電流と磁場による力を利用して、電気エネルギーを運動エネルギーへと変換する装置です。洗濯機や冷蔵庫、自動車、パソコンなど多くの機械を動かすのに使われており、モーターの心臓部ともいえる鉄心に電磁鋼板が活用されています。

 

回転するモーターの磁気は、常に方向が変化し続けているため、あらゆる方向へ磁力を向けられる無方向性電磁鋼板が重宝されています。

 

発電機

 

機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機(ジェネレーター)にも、電磁鋼板はなくてはならない存在です。大規模な発電所から小型の携帯用発電機まで、さまざまな場面で使用されています。

 

発電機は、水の落下エネルギーや風の力などでタービンを回し、機械的エネルギーを電気エネルギーへ変換する装置です。ここにもコイルが使用されており、磁気特性に優れる電磁鋼板が活用されています。

 

高性能な電磁鋼板を使用することで、できるだけエネルギー損失の少ない効率的な発電が可能になります。大規模な発電所ほどわずかな効率上昇が、大きな省エネにつながるため、高性能な電磁鋼板が使用されているのです。

 

電磁石

 

コイルに電気を流すことで磁力を発生させる電磁石にも、電磁鋼板が使用されています。電磁石は一般的な磁石と違って、通電時のみ磁力が発生し、電気を止めると磁力が消えるのが特徴です。

 

電磁石は身の回りのさまざまな製品に利用されており、例えばスピーカーは、電源を入れると音声信号を受け取った電磁石が振動し、膜を震わせることで音を出しています。

 

他にも、リニアモーターカーやオートロックなども、電磁石の磁力をオンオフできる性質を利用しています。

 

コイルの鉄心には電磁鋼板が使用されており、高性能なものほど省エネ化や小型化が可能です。

 

まとめ

 

電磁鋼板は、電気を流して強い磁力を得るための鋼材です。鉄に微量の合金元素を添加することで、より強い磁力を伝えられるよう機能性が高められています。

 

モーターや変圧器、電磁石など日常生活のあらゆる場面で使用される機器に使用されているため、現代社会を支えているといっても過言ではありません。

 

電磁鋼板の性能が高まるほど、電気機器の効率化や出力アップ、小型化などが可能です。

 

既存製品のバージョンアップやハイパフォーマンスな新製品の開発には、高性能な電磁鋼板が必要不可欠です。超硬素材・超硬加工 ソリューションナビでは、素材開発から精密加工まで一貫して請け負っており、ご要望に合致した一点ものの製品で、貴社の課題を解決いたします。

 

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この記事を監修した人

エバーロイ商事株式会社

大久保 文正

エバーロイ商事株式会社

昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。

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