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タングステンカーバイドとは? 特徴や用途を解説
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高い硬度・強度・耐熱性・耐酸化性などを備えており、かなりタフな素材として知られるのが「タングステンカーバイド」です。工業用のドリルやカッターに使われる超硬合金の主成分として知られ、身の回りのあらゆるものの製造に関わっています。
驚異的な性能から多くの分野で活躍する金属ですが、日常的に触れるものではないため、どのような金属なのか知らない方もいるでしょう。
本記事では、タングステンカーバイドとは、どのような金属なのか特徴や用途を解説します。
タングステンカーバイドとは
タングステンカーバイドとは、タングステンと炭素の合金です。鋼よりもヤング率が大きく、引っ張っても伸びが少ない硬い材料だといえます。
他にも高硬度・高強度・高弾性・耐摩耗性・耐熱性・耐酸化性・耐薬品性を有しており、あらゆる面でタフな素材です。特に硬さはダイヤモンドに匹敵するレベルで、モース硬度ではダイヤモンドの「10」に次ぐ「9」です。
また高温下でも高い強度を保つことに加え、熱膨張率が低いのも特徴です。高温環境下で使用される工具や高速回転する工具に使っても、平常時と変わらない硬さを発揮できます。
そのため加工工具やプレス金型など、高い硬度・耐摩耗性などが要求される分野で活躍する「超硬合金」の主原料として使用されています。
超硬合金は、その突出した硬さから耐摩耗性に優れており、部品・部材の長寿命化を図ることが可能です。メンテナンス回数の削減により、生産性の向上・コスト削減にもつながります。この丈夫さは、タングステンカーバイドを原料としているからこそです。
他にもタングステンカーバイドは、切削工具やナイフ、穴あけ工具、機械加工、冶金、石油掘削、採掘工具、電子機器など幅広い場面で活用されており、軍事産業や航空宇宙などでも使用されています。
生活の中で手にすることは少ないものの、身の回りにある多くの品々の製造に関わっている金属です。
※参考:アライドマテリアル.「タングステンカーバイドとは」.https://www.allied-material.co.jp/techinfo/tungsten_carbide/features.html ,(参照2024-07-29).
タングステンとタングステンカーバイドの違い
タングステンとタングステンカーバイドの違いは、炭素と結合しているか否かです。タングステンカーバイドは、炭化タングステンとも呼ばれ、タングステンに炭素を添加した合金です。
そもそもタングステンとは、銀灰色の見た目のレアメタルの一種。スウェーデン語・デンマーク語などで「重い石」を意味しており、金と同程度に重く、鉄や鉛よりも重い金属です。
金属の中でも融点がかなり高く、熱膨張率が低いため、高温環境下でも形状を維持しやすい特性を生かして、高温炉などの部品に活用されています。
このタングステンに炭素を結合させると硬度が増し、ダイヤモンドに次ぐ硬さを誇るタングステンカーバイドとなります。
タングステンとタングステンカーバイドの違いは、下記の通りです。
- 弾性率:タングステンカーバイドの方が弾性率が高く、変形に対する抵抗力が高い
- せん断弾性率:剛性率とも呼ばれ、せん断やねじりに対する抵抗を指す。一般的な鋼のせん断弾性率が80GPa前後なのに対し、タングステンは2倍の160GPa、タングステンカーバイドは3倍の240GPaを誇る
- 熱伝導率:熱伝導率はタングステンの方が高く、温度安定性(温度が変化しても形状・寸法・電気的特性・化学的性質などがほぼ変化しない性質)を備えているため、フィラメントや加熱コイルなどに適している
- 硬度:タングステンも高い硬度を誇るが、タングステンカーバイドの方がより硬くなっている。タングステンカーバイドはタングステンの特性と炭素の硬度・化学的安定性も備えている
タングステンカーバイドは、タングステンよりも、あらゆる面で硬く頑丈な素材です。熱伝導率ではタングステンに劣るものの、切削工具や金型などに使用するならタングステンカーバイドの方が良いでしょう。
タングステンカーバイドの特徴
タングステンカーバイドの特徴は、あらゆる面で丈夫なタフさです。どのような頑丈さを備えているのか、それぞれ解説します。
高いモース硬度
タングステンカーバイドは硬い素材で、ダイヤモンドに次ぐ高いモース硬度を誇ります。
モース硬度とは、主に鉱物の硬さを10段階で表す尺度のことです。 絶対的な硬さではなく、ある鉱物が別の鉱物を傷付けられるかという相対的な評価で判定され、最も柔らかいタルクを1・最も硬いダイヤモンドを10としています。
タングステンカーバイドは、ダイヤモンドに次ぐモース硬度9です。硬いダイヤモンドがドリルなどの工具に使われることからも分かるように、硬い金属は他の柔らかい金属を削ることができます。
タングステンカーバイドは金属の中でもトップクラスに硬いため、加工工具の原料としてぴったりです。他の金属をはじめ硬い材料を加工できるのはもちろん、高い摩耗性・耐久性からメンテナンスや交換が少なくて済みます。
耐熱性
タングステンカーバイドは高い耐熱性を誇り、高温環境下でも安定した状態を保てる素材です。
タングステンカーバイドの原料であるタングステンが持つ温度安定性により、温度が変化しても形状や寸法、電気的特性、化学的性質などがほとんど変化しません。
そのため溶接・鋳造を伴うような高温環境下の工場でも、高い強度を維持したまま使用できます。他にも、ドリルのような摩擦による熱で大きな負担がかかる工具であっても、タングステンカーバイドであれば高い硬度を維持したまま使用できます。
加えて熱膨張率が低いため、高温・高速環境下でも寸法に狂いが生じにくく、熱膨張による破損が発生しにくいのも利点です。
耐酸化性
タングステンカーバイドは安定した物質のため、常温・空気中で酸化しません。
例えば鉄の場合は、放置していると空気中の水分と酸素によって錆びが発生するため、錆びを防止するコーティングやメンテナンスが必要です。タングステンカーバイドであれば、特別な処理を施さなくても酸化しません。
錆びの大きなデメリットは、酸化前より脆くなることです。もし加工工具の強度が低下すれば、部品が脱落したり破損したりしやすくなり、生産性・加工精度ダウンや事故のリスクアップ、異物混入など重大な問題につながります。
耐酸化性の高いタングステンカーバイドであれば、こうした問題を事前に防げます。
耐薬品性
タングステンカーバイドは耐薬品性が高く、水や塩酸、硫酸と反応しないのもメリットです。
化学変化や腐食に強いことから、化学プラントや半導体製造など、薬品を扱う工場で扱う機械や工具などの部品に使用しやすくなっています。
また耐薬品性の低い金属の場合は、金属部品にコーティングや塗装などを施す必要があるため、製造時やメンテナンスなどのコストが上昇することも考えられます。タングステンカーバイドであれば、特別な加工を施す必要がありません。
ただしどのような薬品にも耐性があるわけではなく、硝酸には溶解します。
タングステンカーバイドの製造方法
タングステンカーバイドの製造方法は比較的シンプルです。まずはタングステンの粉末とカーボンの粉末を混合して、高温で加熱してタングステンと炭素を反応させます。
この工程で炭化することで、タングステンカーバイドが生成されます。
一般的な製造方法は、比較的大きめの粒子を得られる方法です。企業によっては独自の製法により、さらに微小な粒子を生成する場合もあります。
タングステンカーバイドの用途
タングステンカーバイドは、基本的には超硬合金の原料として使用され、さまざまな分野で活用されます。代表的な用途として、切削工具・耐摩耗工具の2つを紹介します。
切削工具
切削工具とは、切って削ることで製品を作ったり形を整えたりするものです。
超硬合金は群を抜いて硬い素材のため、どのような素材も加工しやすいことに加え、部品のメンテナンス回数が少なくて済むため生産性の向上につながります。
例えば、以下のようなものに、タングステンカーバイドを原料とした超硬合金が使用されています。
- 旋削や転削加工に用いられる刃先交換式のチップ
- プリント回路基板ドリル
- エンドミル
- ドリル
- フライス など
これらは金属製品の加工や半導体基板の穴あけ加工など、多くの工場で使用されており、工業・製造業に欠かせない存在となっています。
工場以外でも、シールド工法のトンネル建設で硬い岩盤を砕いたり、道路のアスファルトを切断したりと、建設現場でも活用されています。またインフラや公共事業などの分野でも活躍しているのが特徴です。
耐摩耗工具
金型をはじめとする耐摩耗工具にも、タングステンカーバイドを原料とした超硬合金が使用されています。
耐摩耗工具とは、摩耗に強く、長期間にわたって高い性能を維持できる工具のことです。下記のような、高精度な加工や効率的な生産に不可欠な存在を指します。
- 金型
- ダイス
- ロール
- ノズル
特に金型部品には、変形に強い超硬合金は欠かせません。自動車の部品やスマートフォンの電子部品など、高い寸法精度を求められる加工にも使用されます。
まとめ
タングステンカーバイドは、タングステンとカーボンの合金です。タングステンにカーボンを結合させて硬度をアップさせており、ダイヤモンドに次ぐ硬さを誇ります。
高硬度・高強度・高弾性・耐摩耗性・耐熱性・耐酸化性・耐薬品性と、あらゆる面でタフな素材のため、どのような環境下でも高いパフォーマンスの発揮が期待できるのが特徴です。
この頑丈さから、ドリル・フライスなどの切削工具や、金型をはじめとした耐摩耗工具などに使用される超硬合金の原料として重宝されています。
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この記事を監修した人
大久保 文正
エバーロイ商事株式会社
昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。
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