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技術情報・技術コラム

プレス金型とは?金型の種類や用いられる部品、素材を解説

プレス金型とは、加圧により工作物を特定の形状に成形するための工具です。工業製品の大量生産に用いられることが多く、品質(Quality)・納期(Delivery)・コスト(Cost)を高水準で達成するためには欠かせません。

プレス金型を活用するに当たっては、概要や種類、加工方法などを理解しておきましょう。

本記事では、プレス金型の概要や必要な理由、種類を解説します。記事後半では、プレス金型を用いる加工方法や構成する主な部品、用いられる素材なども解説するので併せて参考にしてください。

プレス金型とは

プレス金型とは

プレス金型とは、金属やプラスチックなどの加工物をプレスして特定の形状に加工するための特殊な工具です。工作物をプレスして高い圧力をかけるためのプレス機械(鍛圧機械)に取り付けて使用します。

主にプレス加工に用いられる工具であり、高精度かつ高効率で大量生産するためには欠かせません。高度な技術を要する複雑なプレス金型の製作には、3D-CAD(Computer-Aided Design)/CAM(Computer Aided Manufacturing)が利用されることもあります。

プレス金型が必要な理由

プレス金型は、工業製品の製造に欠かせない重要な役割を果たしており、特にQDCを達成するためには欠かせません。

QDCとは、品質(Quality)・納期(Delivery)・コスト(Cost)の3つの頭文字を取ったもので、製造業における重要な管理指標です。

  • 品質(Quality):製品の性能や耐久性を保証するための指標
  • 納期(Delivery):顧客への製品提供時期を守ること
  • コスト(Cost):製品製造にかかるコスト

プレス金型の使用により、製品の性能や形状、寸法の一貫性が保たれ、高品質な製品の大量生産が可能です。生産プロセスを自動化・効率化できるため、納期を確実に守ることにもつながります。初期投資や設備投資、ランニング・メンテナンスコストはかかるものの、一度プレス金型が完成すれば、長期的に同じ金型を使用し、大量の製品を低コストで製造できるため、コスト面にも貢献します。

プレス金型の種類

プレス金型には、以下に挙げる種類があります。

  • 単発型
  • 順送型
  • トランスファー型

目的や用途に応じて使い分けることが重要なので、それぞれの概要や特徴を詳しく見ていきましょう。

単発型

単発型とは、一つの工程で一つの作業を行う、シンプルなプレス加工方法に用いられる金型です。例えば、それぞれの金型で曲げ加工や絞り加工など単一工程のみを実行できます。

単発型のメリットは、比較的安価に製作でき、初期コストが少なく済む点です。また、オペレーターの手によって微調整が可能であり、大型製品の少量ロット生産に向いています。

一方で、自動化されておらず人の手が必要となり、生産性は低い点がデメリットです。加えて、精度がオペレーターの熟練度の影響を受ける点なども挙げられます。生産性やオペレーターによるばらつきを抑えるために、複数台のプレス機械をタンデムラインに並べて自動化する「タンデム加工」が行われることもあります。

順送型

順送型とは、一つのプレス金型で曲げ加工・せん断・絞り加工など複数の加工が行えるタイプです。別名「プログレ(PRG)」とも呼ばれます。工作物をプレス機械にセットした後に、ロール状のコイル材を使用して順次プレス加工を施し、最終的に完成品を作り出す仕組みです。

順送型のメリットは、その生産性の高さです。一度にまとめて複数のプレス加工を行えるため、短時間に大量の製品を製造できます。自動化されており、材料をセットするために人の手が必要になることもありません。

一方で、金型自体が複雑で製造コストがかかるため、初期導入コストが高くなる点には注意が必要です。また一度製造された金型は、加工パターンや寸法を調整するのが難しくなります。設計や要件が変更された場合、金型の修正や再製作が必要となるケースもあります。

トランスファー型

トランスファー型とは、プロセスごとに複数の単発型プレス金型を並べ、加工物を自動で次のプレス金型へと送り連続的に加工するタイプです。プレス金型は単発型で用いられるものと同様ですが、自動搬送装置の活用により、加工プロセスの自動化を実現しています。

トランスファー型のメリットは、複雑な形状の製品の加工や多段階の加工を同一ラインで一貫して行える点です。順送型ほどではありませんが大量生産が可能であり、材料の歩留まりが良いため、無駄を減らせます。

しかし複数の形状の金型と自動搬送装置が必要となるため、初期コストがかかる他、設計も難しい点がデメリットです。

プレス金型を用いる加工方法

プレス金型を用いる加工方法には、以下が挙げられます。

加工方法

内容

せん断加工

素材を切断・分離する加工方法。あらかじめ不要な部分を除去しておくことで、効率化できる。

曲げ加工

素材を曲げる加工方法。プレス金型や機械の種類により、V曲げ・U曲げ・L曲げ・カール曲げ・ロール曲げ・ヘミング曲げなどさまざまな方法がある。

絞り加工

パンチ(雄型)とダイ(雌型)の形状に合わせた容器状の製品を製造する加工方法。一枚の金属板から、円筒・円錐状などさまざまな形状の底付容器を製造できる。

成形加工

「型」を用いる加工方法。プレス金型以外にも、鋳造や鍛造などがある。

圧縮加工

金型の中に材料を入れ、加圧して変形させる加工方法。押出・コイニング・ヘッディング・コイニング・アプセッティングなどの方法がある。

ファインブランキング加工

ブランキング(抜き打ち)を行う加工方法。一般的なプレス機械では難しいマイクロメートル単位での精密なプレスが可能。

プレス金型と一口にいっても、上表のように加工方法により内容が異なるので、製品や目的に応じて使い分ける必要があります。

プレス金型を構成する主な部品

プレス金型を構成する主な部品は、以下の通りです。

  • パンチ
  • ダイ
  • パンチプレート
  • ダイプレート
  • バッキングプレート
  • ストリッパプレート
  • ガイドポスト

それぞれの部品の概要や特徴を詳しく見ていきましょう。

パンチ

パンチとは、金属板の切断・打抜き・曲げの役割を担う部品です。後述するダイとともに使用し、ポンチや雄型とも呼ばれます。

ダイ

ダイとはパンチと対をなす部品で、主な役割は押し出された工作物を受け止めることです。パンチの受け、または雌型とも呼ばれます。

パンチとダイは工作物に直接接触する部品であり、製品の品質を向上させるためにはダイとパンチの位置関係の精度を高めることが重要です。

パンチプレート

パンチプレートとは、パンチを固定し位置決めするための部品です。

パンチにより工作物を成形しますが、垂直を維持できなければ製品の品質が低下します。そのため、パンチプレートを用いてパンチの位置を固定・安定させる必要があります。

ダイプレート

ダイプレートとは、プレス加工時にダイが損傷しないように安定性を確保するための部品です。

ダイと一体化しているタイプから、入れ子式のタイプまでさまざまな種類があります。製作やメンテナンスのしやすさが異なるので、特性を把握しておくことが重要です。

バッキングプレート

バッキングプレートとは、プレス加工時にパンチが過度にのめり込まないようにするための部品です。バックアッププレートやバックプレートとも呼ばれます。

高い加圧に耐えるために熱処理が施されており、強度が高められています。

ストリッパプレート

ストリッパプレートとは、パンチで打ち抜かれた工作物をパンチから引きはがす役割のある部品です。材料をダイに押し付けた際、変形を抑える役割も果たしています。

ガイドポスト

金型をプレス機械に固定するために、上下にダイセットと呼ばれる部品があります。ガイドポストは、ダイセットの芯合わせに必要な部品です。

ガイドポストがあることにより、上下の方を正確にはめ合わせることができ、高品質な製品の製造に欠かせない重要な役割を担っています。

プレス金型に用いられる素材

プレス金型の製造には、高い圧力に耐えられる靭性や、耐摩耗性・耐熱性に優れた素材が用いられます。主に用いられるのは、合金工具鋼や高速度工具鋼(ハイス)などの工具鋼です。

合金工具鋼とは、炭素工具鋼(SK材)にW(タングステン)・Cr(クロム)・Mo(モリブデン)・V(バナジウム)などを加えたものです。工具鋼のうち、JIS規格のSKS(Special Kogu Steel)・SKD(Special Kogu Die Steel)・SKT(Special Kogu Tool Steel)に該当します。切削工具用・耐衝撃工具用・冷間金型用・熱間金型用などの種類に分けられ、プレス金型には冷間金型用の合金工具鋼を使用するのが一般的です。

高速度工具鋼(ハイス)とは、高速で金属材料や被加工材の切削を行うことに特化した工具鋼です。タングステンハイス・モリブデンハイス・コバルトハイス・マトリックスハイス・粉末ハイスなどがあります。超硬合金と比較して耐衝撃性や耐摩耗性は劣るものの、靭性が高い分加工しやすく、コストパフォーマンスに優れているのが利点です。

まとめ

プレス金型とは、金属やプラスチックなどの加工物をプレスして特定の形状に加工するための特殊な工具です。工業製品の生産時の重要な管理指標であるQDC(Quality:品質、Delivery:納期、Cost:コスト)を高いレベルで実現しつつ、製品を製造するためには欠かせません。

プレス金型は大きく、単発型・順送型・トランスファー型があり、メリット・デメリットを把握した上で目的や用途に応じて使い分けるのが重要です。用いられる素材もいくつかあり、加工方法も種類が豊富なので、それぞれの特徴を理解した上で製品ごとに適切に選びましょう。

エバーロイ商事株式会社では、超硬素材選定・超硬製品開発・超硬精密加工を提供しています。素材開発から精密加工までの一貫したソリューション提供により、お客さまの課題を解決に導きます。プレス金型に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を監修した人

エバーロイ商事株式会社

大久保 文正

エバーロイ商事株式会社

昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。

超硬素材・超硬加工 ソリューションナビを運営するエバーロイは、
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