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切削加工とは?メリット・デメリットや種類、加工時の注意点などを紹介
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切削加工とは、樹脂や金属などの材料を削ったり切断したりして、必要な形状に加工する方法です。高い精度で加工できることや形状・材料が多彩なことなどから、金属加工の中でも特にメジャーな加工方法だといえます。
ただし製品にばらつきが生じやすかったり、大量生産には不向きだったりと、デメリットも存在します。そのため必ずしも万能な加工方法とはいえません。
切削加工は、どのような製品に適しているのか、メリット・デメリットや加工の種類、注意点などを紹介します。最適な加工方法にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
切削加工とは?
切削加工とは、金属や樹脂などの材料を削って、必要な形状に加工する方法です。工作機械で行うのが一般的で、旋盤やフライス盤など、さまざまな種類の工作機械が存在します。図面通りの形状に高精度で製作できるのが特徴です。
不要な部分を取り除く「除去加工」に分類され、他の加工に比べて一度に削り取れる量が多く、加工物の全形を作るのに適した加工方法です。
対象物を削り取る「切削」と、工具または加工物を動かして新たな面を切削できるように動かす「送り」の2つを繰り返して、必要な形に整えていきます。
材質の硬さや形状、削る量によって加工費用は異なり、複雑な形状など難易度が高いものほど高額になります。
また、金型などの事前準備が必要ないため、多品種・小ロット製品の生産に適した加工方法です。
切削加工のメリット
切削加工のメリットは、大きく4つあります。
- 低コストで製作できる
- 高い精度の加工を施せる
- 幅広い形状に加工できる
- さまざまな材料を加工できる
それぞれ解説するので、どのようなメリットに魅力を感じるか確認してみましょう。
低コストで製作できる
切削加工の大きなメリットは、低コストで製作できることにあります。鋳造や鍛造加工のように、金型を使用する制作方法では金型製作に時間とコストがかかってしまいますが、切削加工なら3D-CADデータがあれば製作を始められます。
特に以下のようなケースで、切削加工の強みを最大限発揮可能です。
- 1点ものの試作品製作:金型が不要なため低コストで試作品を製作でき、何度も試作しやすい
- 多品種小ロット生産:製品バリエーションが多く生産量が少ない場合、金型を製作するとコストがかさばるため、低コストな切削加工の方が経済的
切削加工は試作品や小ロット生産のような、コスト削減とフットワークの軽さを求められるような場面に適した加工方法です。
また金型を製作する必要がないため、納期も短くなるのもメリットです。場合によっては、3日以内の短納期での納品も実現します。
高い精度の加工を施せる
加工精度が高いのも、切削加工のメリットです。機械が対応できる範囲なら素材の厚みに制限がなく、複雑な形状でも難なく加工できます。
1/1,000のような高精度の加工が施せ、別の部品との嵌合確認するための製作も可能です。寸法精度だけでなく面粗度も調整可能で、用途に合った加工を施せます。
例えば、10ミクロンの公差など人間の目では違いがわからないような極小の管理を行うことも可能です。こうした高度な技術を活かした切削加工は、半導体装置や医療機器、電子部品といった精密さが要求される分野の加工も担っています。
幅広い形状に加工できる
加工できる形状が幅広いのも、切削加工のメリットだといえます。
材料の厚みに制限がないため、機械が加工可能な範囲であれば、さまざまな材料の厚みに対応できます。
中には工具の順番や加工に必要な作業工程を入力すると自動で加工できる方法もあり、複雑な形状でもプログラミングに沿って高精度な加工を施すことが可能です。
また「5軸加工機」や「多軸(複合機)」と呼ばれる加工機では、加工位置を自由に選べるため製品の前後・左右から加工でき、より複雑な形状の加工も行えます。
さまざまな材料を加工できる
さまざまな材料の加工に使用できるのも、切削加工のメリットです。アルミや鉄、ステンレス、チタン、銅など多彩な金属の加工に加え、プラスチック・樹脂や木材といった非金属まで対応しており、削れるものは何でも加工できます。
対応できる材料の種類が幅広いことで、製品の特性や求められる性能などに応じて、最適な素材を選択しやすくなっています。製品設計の自由度が高まるため、幅広いニーズに対応しやすくなるのが魅力です。
切削加工のデメリット
切削加工には多くのメリットがある一方で、いくつかデメリットも存在します。
- 大量生産には向かない
- 製品にばらつきが生じる
- 作業者の技量が必要になる
デメリットも把握した上で、製品にマッチした加工方法なのか確認してみましょう。
大量生産には向かない
切削加工の性質上、大量生産には向かないのがデメリットです。
切削加工は余分な部分を削り取るため、どうしても切りくずが発生してしまいます。使用する材料の全てを有効活用できないため、特に材料自体が高価な場合費用が割高になってしまうかもしれません。金型を作成するコストと天秤にかけて、安価に済む方法を選ぶ必要があります。
また、削る量が増えるほど加工に時間がかかるため、生産性が落ちやすいのも難点です。特に複雑な形状や高い精度が要求される加工であれば、より多くの時間が必要となり生産効率は悪くなります。
材料のコストや生産性の高さも踏まえて、適した加工方法を見極めることが大切です。
製品にばらつきが生じる
製品にばらつきが生じやすく、細かい管理が欠かせないのもデメリットです。切削加工を行う工具は刃物が摩耗により変化するため、寸法や面粗度などに違いが生じやすくなっています。
また、前述したように切りくずの発生を抑えることは不可能で、粘りが強い素材を加工する際には、工具に切りくずがまとわり付くこともあります。
製品のクオリティを均一に保つためには、加工部品毎に細かい管理・メンテナンスが必要です。加工を中断することも考えられるため、歩留まりが悪くなりやすい加工方法です。
作業者の技量が必要になる
作業者の技量が必要になるため、同じ製品でも依頼する業者によってクオリティに差が生じやすくなっています。
高精度な切削加工を施すには、多くの刃物の中から作業に適したものを選び使い分ける知識や経験が必要です。加工する形状が複雑になるほど、工程の段取りも複雑になっていき難易度が上昇します。
切削加工を依頼する場合は、どのような大きさや素材、製品の加工が得意なのか確認してから発注することが大切です。
切削加工の種類
一口に切削加工といっても種類があり、主に以下の3つに大別されます。
- 転削加工(フライス加工)
- 旋削加工(旋盤加工)
- 穴あけ加工(ボール盤)
切削加工の種類と、それぞれの特徴を紹介します。
転削加工(フライス加工)
転削加工は、固定した素材に回転する工具を当てて加工します。刃を動かしながら連続して加工を行えるため、一度設置すれば多くの箇所を削り出せる方法です。部分的な研磨や仕上げ加工にも使われます。
主に、以下のようなマシンを使用します。
- 汎用フライス:手動で操作するフライス加工。加工条件(工具の位置や送り、速度、切り込み量など)を作業者が調整する
- NCフライス:コンピューター制御されたフライス加工。加工プログラムで制御することで、複雑な形状も加工できる
- マシニングセンタ:連続して多彩な加工ができるNC工作機械。自動で工具を交換しながら、図面やプログラムに沿った加工を進められる。複雑な動きが可能で、より正確な加工を施せる
角型素材の加工に適しており、切削工具を使い分けることで、さまざまな形状に加工できます。
旋削加工(旋盤加工)
旋削加工は、素材を回転させながら固定した切削工具の刃(バイト)に押し当てる加工方法です。バイトを使い分けることで、穴あけや中ぐり、溝加工、ねじ切りなど多彩な加工を施せます。
主に、以下のようなマシンを使用します。
- 汎用旋盤:手動で刃物を当てて加工する機械。熟練の技術が必要だが、複雑な部品や精密な作業が必要な場合に適している。1点物の製品や試作品などに使われる
- NC旋盤:コンピューター制御で加工する機械。バイトの当て具合や送り加減などをプログラムで調節でき、細かな加工を施せる
円形素材の加工に適しており、バイトを切り替えることでさまざまな形状に対応できます。
穴あけ加工(ボール盤)
穴あけ加工は、ボール盤と呼ばれる機械で素材に穴を開けたり、加工物の穴を掘り広げたりできます。旋削加工や転削加工でも穴あけ加工は施せますが、回転するドリルが付いたボール盤はより特化しており、加工箇所を滑らかにするリーマ加工も可能です。
正確で真っすぐな穴を素早く開けられるのが利点で、座ぐり加工や中ぐり加工、ねじ切り加工など、切削工具を取り換えることで、多彩な加工を施せます。
切削加工時に注意するポイント
切削加工時には、3つの注意すべきポイントがあります。うまく加工できない要因になりかねないため、あらかじめ気を付けておくことが大切です。
抵抗力
加工中に工具と素材の間に発生する摩擦力により、抵抗が生じるため適切な加工条件を設定する必要があります。
抵抗力が大きいほど工具の寿命が短くなるだけでなく、摩擦熱により素材の変形・焼けが発生してしまい仕上がりが悪くなるかもしれません。
抵抗力の大きさは、素材の特性や工具との接地面積、回転速度・送り速度、工具の種類などに左右されます。
切削加工を行う際には、奇麗に仕上げられるよう条件を調整することが大切です。
速度
素材との相性や納期との兼ね合いから、最適な速度で加工する必要があります。
理論上は、工具の速度を上げるほど作業速度も上がるため、生産効率が高まります。しかし速度が増すほど抵抗も強くなり、摩擦熱による変形のリスクも高まってしまうためスピードだけを追求することはできません。
材質や工具、加工内容に合った適切な速度で加工することが大切です。
熱
加工の際に発生する摩擦熱は、工具の熱変形や溶着、熱膨張による食い付き、工具寿命の低下などの原因となり、仕上がりの悪化にもつながります。
切削による熱が発生しない条件設定が必要なのはもちろんですが、素材と工具との摩擦を減らす切削油の使用も大切です。熱や切り粉を除去できるため、奇麗に仕上げやすくなります。
まとめ
切削加工は、加工したい素材を工具で削り取ることで理想の形状に仕上げる方法です。金属はもちろん樹脂や木材など非金属の加工もでき、幅広い素材を加工できます。複雑な形状にも対応しているため、1点もののこだわりの品や試作品などの製作に適しています。
ただしコスト面の問題から大量生産には適しておらず、精度の高い加工には作業者の技量が必要になるなどデメリットもある加工方法です。
適した加工方法がわからずお悩みの方は「超硬素材・超硬加工ソリューションナビ」にお任せください。最適な超硬素材の選定・開発から超硬加工・完成品の提供まで一貫して行っており、お客様の要望に適した製品を製造いたします。まずは気軽に、お問い合わせください。
超硬素材の選定・開発から超硬加工のことならエバーロイへご相談ください
この記事を監修した人
大久保 文正
エバーロイ商事株式会社
昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。
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