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サーメットとは?用途や歴史、メリット・デメリットなど徹底解説
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サーメットとは、セラミックスと金属の複合材料です。高温・耐摩耗環境下での使用に適した素材で、切削工具をはじめ工具や機械部品などに広く使われています。超硬合金では加工の難しい難削材にも対応でき、摩耗しにくいことから工具寿命も長くなるのが特徴です。
本記事では、サーメットの用途や歴史、メリット・デメリットについて解説します。サーメットは何が優れているのか、どのような用途に使えるのか知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
サーメットとは?
サーメットとは、セラミックス(Cera mics)と金属(Metal)を組み合わせた造語で、超硬合金とセラミックスの中間の性能を発揮する人工素材です。
セラミックスの硬さと金属の靭性(粘り強さ)を併せ持った両者の中間的な素材で、その硬度はダイヤモンドに次ぐ硬さを誇る超硬合金を凌ぎます。
元々は超硬合金の代替素材として開発されましたが、炭化タングステンを主成分とする超硬合金と違い、サーメットは炭化チタンを主成分とし、ニッケルを結合剤に使用しています。現在では、モリブテンや窒化チタンを加えて靭性を高めたサーメットが主流です。
他にも、欠け防止のコーティングを施した「コーテッドサーメット」のような、機能をプラスされたものもあります。
サーメットの用途
サーメットは硬度の高さから、切削工具や機械部品などに広く使われています。特に高速切削を行う工具として重宝されており、超硬合金よりも高温強度・耐酸化性に優れているため、高速でも安定した切削が可能です。
また仕上げ面の美しさから、鉄鋼材料の仕上げ加工にも使用されています。サーメットは鉄との親和性が低く、サーメット製の切削工具で鉄鋼材料を削っても、刃先に切粉が溶着しにくいため、光沢のある仕上げ加工に最適です。
ただしハイスに比べると刃先が欠けやすいため、重切削には向いていません。
サーメットの歴史
サーメットの歴史は、1950年頃から始まっています。超硬合金の誕生から10年も経たないうちに、タングステンカーバイド以外の炭化物を主原料とした硬質材料の開発がスタートしました。
第二次世界大戦後のジェットエンジン材料の開発発展に伴って、1950年以降セラミックスと金属による複合材料であるサーメットの研究開発が活発となります。靭性の点からジェットエンジン材料には採用されませんでしたが、切削工具用途への研究開発は継続されました。
超硬合金よりも鋼との親和性が低いため、美しい仕上げ面が得られると仕上げ加工用の材料として進化を続けてきました。靭性の低さが課題ではありましたが、何度も改良を重ねて少しずつ克服しながら、切削工具用途に最適化された材料として現在も進化を続けています。
サーメットのメリット
サーメットを使用するメリットは、大きく4つあります。
- 高速切削できる
- 硬度が高く長持ちする
- 高温でも硬度が保たれる
- 溶着性が低く美しく仕上がる
サーメットには、具体的にどのようなメリットがあるのか紹介します。
高速切削できる
サーメットの大きなメリットは、高い硬度と耐摩耗性高速、耐熱性、耐酸化性により、被削材と反応しにくく、高速でも安定して切削できることにあります。
特に超硬合金をも上回る硬度により、超硬合金では加工が難しい素材でも高い精度で高速切削できます。
切削速度が速いほど大量の材料を短時間で加工できるため、より多くの材料を納品できるようになり、生産効率を飛躍的に向上させることが可能です。大量生産や短納期での納品にも対応しやすくなります。
硬度が高く長持ちする
サーメット製の工具や金型は、硬度が高く長持ちしやすいのもメリットだといえます。高い硬度や耐摩耗性のおかげで、長期間の使用に耐えられるため、工具の寿命が長く買い替えによるコストが発生しにくくなっています。
ツールとしての寿命・耐久性を重視する場合や、長期間にわたり一定の作業精度を求められる状況に、サーメット製の工具はぴったりです。
また、耐酸化性に優れているため、刃先が腐食しにくくなっており、鋭い切れ味が長続きしやすいのもメリットです。
高温でも硬度が保たれる
サーメットは高温環境下でも、硬度が変わらず常温と同じ硬度を保てるのもメリットです。
金属によっては温度が上がることで硬度が下がるものもありますが、サーメットは常温と変わらない高硬度を維持できるため、切削時に発生する熱による硬度低下が少なくなっています。
そのため安定的な高速切削が可能となっており、大量生産・短納期を実現します。
溶着性が低く美しく仕上がる
溶着性が低く、美しく仕上げられるのもサーメットのメリットです。
一般的に超硬合金をはじめとした鉄に反応しやすい素材では、刃先に被削材が溶着する構成刃先が発生しやすいため、仕上げ面が奇麗になりにくくなっています。
しかし、サーメットに含まれる炭化チタンや錫は、鉄との親和性が低く、鉄や鋼を加工しても刃先に被削材の材質が溶着しません。刃先に切粉が溶着しにくいおかげで、光沢のある仕上げ加工を施せます。
サーメットのデメリット
サーメットには高い硬度や耐摩耗性などから、多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。
- 刃が欠けやすい
- 刃に熱がこもりやすい
デメリットも把握した上で、サーメットに適した作業で使用しましょう。
刃が欠けやすい
サーメットは衝撃に弱く、刃が欠けやすいのがデメリットです。超硬合金よりも硬いサーメットですが、靭性は低く衝撃が加わると欠けやすくなっています。改良を重ねることで靭性が高まってはいますが、完全な克服には至っていません。
特に切り込みが深かったり、切削の速度が遅かったりすると、刃にかかる力が大きくなりチッピングを起こしやすくなります。工具に負荷がかかりやすい断続切削にも不向きです。
防止するためには、高送りや高切り込みは避けて、小送り・小切り込みで使用する必要があります。
刃に熱がこもりやすい
刃に熱がこもりやすいのも、サーメットのデメリットです。
サーメットの主成分であるチタンやタンタルは、熱伝導率が低く熱容量も小さいため、切削作業による熱が刃先に溜まりやすくなっています。切削時と空転時の温度差で、刃先に熱亀裂(クラック・欠け)が発生するかもしれません。
サーメットの中には、熱伝導率が高いタングステンを微量添加してデメリットを軽減しているものもあります。
サーメットでの作業には、水溶性の切削油は使用せず、乾式切削で行うことをおすすめします。
サーメット以外の工具材質の特徴
サーメット以外にも、工具にはさまざまな材質が使用されています。
- 超硬合金
- ハイス(高速度工具鋼)
- 炭素工具鋼
- CBN焼結体
それぞれ特徴が異なり向き不向きがあるので、作業内容や環境、加工したい素材などに合わせて適切な工具材質を選ぶことが大切です。
超硬合金
超硬合金は、タングステンにコバルトを加えて焼き固めた金属です。高い硬度や耐熱性、靭性を誇り、切削工具に広く使われている材質の一つです。
耐摩耗性を要求される加工工具やプレス金型に使用され、弾性係数や圧縮強度が高く変形しにくいことから、寸法精度の高い金型として活用できます。
また、耐摩耗性に優れているため、工具や金型の長寿命化を図れるため、メンテナンス回数が少なくて済み生産性がアップします。
ただし振動に弱く欠けやすいため、振動の大きな機械には不向きです。加えてレアメタルを使用していることから高額で、イニシャルコストが高くなっています。
関連記事:超硬合金とは?特徴や種類について解説!
ハイス(高速度工具鋼)
ハイスはハイスピードスチールの略で、日本語では高速度工具鋼と呼ばれます。主に切削工具などによる高速切削加工に使われています。
鋼にクロムやタングステン、モリブデンなどの金属成分を加えた鉄鋼材料で、サーメットや超硬合金ほどの硬度はないものの、高い靭性を誇るのが特徴です。硬度と粘り強さを兼ね備えていることで、チッピング・折損が起こりにくくなっています。
そのため振動に強く、工具に何度も強い力が加わる断続切削でも、刃が欠けることなく作業を行えます。
また、価格が安いため経済的なのも魅力です。使用頻度の低い加工や試作品などにも気軽に使用しやすくなっています。
関連記事:高速度工具鋼とは?種類や製造方法、メリット・デメリットなどを徹底解説
炭素工具鋼
炭素工具鋼は、硬さと耐摩耗性により工具に用いられることが多い材料で、ピンやシャフトなど機械部品や金型などにも用いられています。炭素含有量によって硬さが変化し、炭素量が増えるほど硬くなるため、適した用途が異なります。
主な鋼種と用途は、下記の通りです。ちなみに鋼種の数字は、炭素含有量のパーセンテージを表しています。
- SK140:刃やすり、組やすり
- SK105:たがね、ゲージ、刃物、治工具、プレス型
- SK95:木工用きり、斧、たがね、ペン先、ケージ
- SK85:刻印、プレス型、帯のこ、治工具、ゲージ
- SK65:刻印、スナップ、プレス型、ナイフ
硬さを最重視するものには炭素含有量が多いものが、靭性も必要なものには炭素含有量の少ない鋼種が適しています。
ただし高温になると硬さが低下してしまうため、さほど熱が発生しない部品・機材や、人が手で使う工具の材料に適しています。
CBN焼結体
CBN(立方晶窒化ホウ素)は、窒素とホウ素から作られた化合物で、耐熱温度が1,300度と高く、切削工具の材料をはじめ焼入れ鋼や耐熱合金の加工にも使用されます。そのCBNの粉末を超硬合金基盤とともにカプセルに充填し高温高圧をかけ焼結。母材と接合させることで製造されます。
超硬合金やサーメットよりも硬度が高く、耐熱性・耐摩耗性も備わっているため、工具交換の頻度が少なくて済みます。連続加工できるため、加工コストの軽減につなげることが可能です。
また、高温下でも変質が少なく摩耗しにくいため、高温下での加工に適しています。炭素が含まれないことで、鉄と反応することなく作業できるのも利点です。
ただし強度・靭性は低く、チッピングを起こしやすいため、刃先に強い力がかかる加工には不向きです。
まとめ
サーメットはセラミックスと金属の複合材料で、高温・耐摩耗環境下での使用に適した素材です。切削工具をはじめ工具や機械部品などに広く使われており、超硬合金では加工の難しい難削材にも対応できます。
ただし靭性が低く刃が欠けやすかったり、温度差で熱亀裂が発生しやすかったりと、弱点もあるため、有効活用するには適した使用環境・作業内容の理解が大切です。
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この記事を監修した人
大久保 文正
エバーロイ商事株式会社
昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。
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