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ハイスとは?製造方法から種類、メリット・デメリットまで解説!
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ハイスとはハイスピードスチールの略で、日本語では高速度工具鋼と呼ばれます。鋼にタングステンやモリブデンなどの金属元素を添加した合金で、高い硬度と耐熱性を持ち、高速での切削加工が可能です。
主に切削工具(ドリルやエンドミル、タップなど)や金型に用いられ、熱と摩耗への強い耐性が必要不可欠な高速切削に用いられます。
とはいえ、ハイスにも細かな種類があり、それぞれ特徴が異なります。適したハイスを選ぶには、種類ごとの違いを把握しておくことが大切です。
そこで本記事では、ハイスの製造方法から種類、メリット・デメリットまで解説します。自社で導入すべきハイスにお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
ハイスとは?
ハイスとはハイスピードスチール(High Speed Steel)の略で、日本語では高速度工具鋼と呼ばれます。国際標準化機構(ISO)ではHSSと表記され、日本工業規格(JIS)ではSKHと表記されます。
鋼にタングステンやモリブデン、コバルトなどの金属元素を添加した合金で、高い硬度と耐熱性、耐軟化性を持っているのが特徴です。
高速・高温での切削加工に適しており、ドリルやエンドミル、タップなどの切削工具や金型などに用いられます。
また、硬度が高いにもかかわらず、靭性(粘り強さ)も持ち合わせているため、欠けや折損に強く丈夫で長持ちする工具を作成可能です。
比較的安価なこともあり、イニシャルコストが低く気軽に導入しやすいのも魅力です。
ただし約600度以上の環境では急激に硬度が低下するため、加工する温度と速度には制限があります。
ハイスの2つの製造方法
ハイスには「粉末ハイス」「溶解ハイス」と2つの製造方法があり、それぞれ特徴が異なります。どのような性能を求めるかに応じて、適した製造方法を選ぶ必要があります。
1.粉末ハイス
粉末ハイスは、原料となる金属の粉末を型に入れて、熱と圧力をかけながら焼き固める製造方法です。一度粉末にしてから固めることで、金属組織が緻密で強度や靭性を高められます。
後述する溶解ハイスと見た目はほぼ同じですが、以下のような点で優れています。
- 硬度
- 靭性(粘り強さ)
- 耐摩耗性
- 金属疲労への耐性
そのため高い性能を期待できるのはもちろん、耐久性が高く長期的に使用できます。後述するコバルトハイスよりも高い硬度を誇り、より高い強度や靭性を求められる作業や、長期的に使用したい場合に適しています。
ただし製造コストが高いため、高価で導入コストがかかってしまうのが難点です。
2.溶解ハイス
溶解ハイスとは、一般的な合金鋼や工具鋼と同じ要領で、溶かした原料を成型・圧延して製造します。溶性ハイスとも呼ばれ、一般的にハイスといえばこちらを指します。
粉末ハイスと比べるとコスト面で優れていることから、溶解ハイスの方がオーソドックスです。
ただし成形・圧延する製造法の都合上、金属組織を構成する結晶が比較的粗く不揃いなため、強度・靭性・耐摩耗性・耐久性などの面で劣ります。
それほど高い強度・靭性などが求められない作業や、コスト面を優先する際には溶解ハイスが適しています。
ハイスの種類
ハイスは、添加されている物質の比率から主に4種類に分類されます。
- タングステンハイス
- モリブデンハイス
- コバルトハイス
- マトリックスハイス
それぞれの特徴を解説します。
タングステンハイス
タングステンハイスは、タングステンの含有量が18%前後のものが主流となっています。数%程度のクロムやバナジウムなども含まれますが、モリブデンは含まれません。
硬度と耐摩耗性の高さが大きな特徴で、一般的な切削工具や旋削加工用の工具などに広く使われています。SKH2・SKH3・SKH4・SKH10などが、代表的な鋼種です。
モリブデンハイス
モリブデンハイスは、5%前後のモリブデンを含んでおり、およそ6%のタングステンも含まれています。タングステンハイスの廉価版として知られ、代表的な鋼種はSKH50~SKH59などの10種です。
タングステンは高価かつ融点が高いため、コストや焼き入れ温度が高くなるのがネックでした。比較的安価で熱処理しやすいモリブデンを使用することで、タングステンの量を減らしながらも高い硬度・靭性を実現しています。
フライスやドリルのような切削工具に使われ、靭性の高さからプレス金型にも適しているなど、幅広い用途に使用できる便利なハイスです。
コバルトハイス
コバルトハイスは、モリブデンハイスにコバルトを加えた素材です。コバルトを追加したことで、モリブデンハイスよりさらに硬度・耐摩耗性が高まっています。
耐摩耗性が高まったことで、工具寿命が長くなり、より長期的に使用し続けることが可能です。
また、コバルトハイスの中にもグレードや種類があり、コバルト粉末を粉末冶金で固めた「コバルト粉末ハイス」という種類もあります。
マトリックスハイス
マトリックスハイスは、通常のハイスよりも炭素量を低く抑えることで、高い硬度と靭性、耐熱性を持ち合わせています。
マトリックスハイスはセミハイス・準ハイスとも呼ばれ、従来のハイスとダイス鋼の中間的な成分構成となっています。
粉末ハイス
製造方法でも紹介した粉末ハイスも、ハイスの種類の一つとされることもあります。タングステンハイス・モリブデンハイスと比べ、高い靭性・耐摩耗性・寿命を誇る優れた鋼材です。
特に靭性に優れ、タングステンハイスより高い靭性を持つコバルトハイスを上回る靭性となっています。高速重切削用の工具など、高い靭性が必要となる工具に適しています。
ハイスのメリット
ハイスを使用するメリットは、主に以下3つが挙げられます。
- 刃が欠けにくい
- 切り落とした部品が飛んでいかない
- 超硬合金より導入しやすい
それぞれ解説するので、自社で求めているものか判断材料にしてみてください。
刃が欠けにくい
硬度が高く靭性の高いハイスは、チッピング(欠け)や折損に強く、刃が欠けにくい工具を作成できます。
一般的に、硬い工具は摩耗に強く切れ味が高いものの、靭性が低くねばり強さがないため、刃が欠けやすくなっています。ハイスであれば高い硬度と靭性を両立しており、超硬合金よりもチッピング・折損しにくい素材です。
また高い靭性のおかげで衝撃にも強く、断続切削のような振動の多い作業にも適しています。ただし、あまりに強い衝撃が加わると歪みが生じて、加工精度が落ちてしまう可能性があるため注意が必要です。
ハイスは硬度と靭性を高いレベルで備えているため、さまざまな切削条件に対応できる汎用性の高い工具材料だといえます。
切り落とした部品が飛んでいかない
ハイスをエンドミルに使用する場合、切り落とした部品が飛んでいかないため安全に作業しやすいのもメリットです。
ハイスエンドミルは、超硬エンドミルよりも硬度・耐熱性が低いため、同じ切削条件では加工できません。超硬よりも切削速度を落として加工するため、切り落とした部品はその場にボトッと落ちます。
切り落とした部品が飛んでいくことで、周囲の作業員や機械設備などに被害をおよぼすリスクを最小限にできます。
超硬合金より導入しやすい
ハイスは超硬合金よりも安価で、導入しやすいのもメリットです。
超硬合金は、炭化タングステンやタンタル、コバルトなどの粉末を焼き固めることで、高い硬度と耐熱性能を持つのが特徴です。工具の歪みやしなりが出にくく、高精度で美しい加工ができます。
しかしレアメタルを多く使用するため価格が高く、導入ハードルの高さがネックです。対してハイスは超硬合金よりも安く、コストパフォーマンスに優れています。
特に試作加工のような、あまりコストをかけたくない場合はハイスの使用がぴったりです。
ハイスのデメリット
ハイスはメリットがある反面、デメリットもあるため使用できる場面に限りがあります。場合によっては使用不可の可能性も考えられるので、デメリットも把握しておきましょう。
温度と加工速度に制限がある
ハイスのデメリットは、約600度以上になると急激に硬度が低下するため、加工する温度と速度に制限があることです。
約600度以上で使用すると仕上げ面や寸法精度、工具寿命などに悪影響が出てしまうため、ハイスを使用する際は、切削工具の刃先と金属が接触する切削点が、約600度以下をキープするのが前提条件となります。
金属加工では切削点が1,000度に達することもあるため、テンパカラーと呼ばれる切りくずの色から、切削点の温度を把握しておかなければなりません。
ちなみにテンパカラーは酸化被膜の厚さによって色が変化するもので、CDやDVDの裏面・シャボン玉などと同じく、光の干渉により色が変わって見える現象です。実際に切りくずに色が付いているわけではありません。
テンパカラーの色は切削点の温度によって変わり、下記のように温度が高くなるにつれ青っぽい色へと変化します。
切りくずの色 | 切削点の温度 |
---|---|
薄黄色 | 約300度 |
褐色 | 約350度 |
紫色 | 約400度 |
すみれ色 | 約450度 |
濃青色 | 約530度 |
淡青色 | 約600度以上 |
ハイスで金属加工を行う場合は、切りくずの色が青みがかってくると危険シグナルだといえ、紫色程度になる切削条件が適切な範囲だといえます。
切削による熱が高くなり過ぎずに加工できる回転数は、一般的に30m/min以下とされています。切削加工時の冷却や切削油の使用など、温度が上がり過ぎないよう配慮して使用することが大切です。
まとめ
ハイスは鋼にタングステンやモリブデンなどの金属元素を添加した合金で、高い硬度と耐熱性を持っており、高速・高温での切削加工に適しているため、ドリルやエンドミル、タップなどの切削工具や金型などに用いられています。
また、高い靭性も持ち合わせているため、欠けや折損に強く丈夫で長持ちするのも魅力です。
とはいえ、自社で使用すべきなのはどの素材かわからず悩まれる方も多いでしょう。「超硬素材・超硬加工ソリューションナビ」では、最適な超硬素材の選定・開発から超硬加工、完成品の提供まで一貫して提供しております。
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この記事を監修した人
大久保 文正
エバーロイ商事株式会社
昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。
超硬素材・超硬加工 ソリューションナビを運営するエバーロイは、
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