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技術情報・技術コラム

金型の寿命とは?決定要因や寿命を延ばす方法を解説

「金型の寿命って具体的に何を指すのだろうか」「寿命に影響を及ぼす要因には何が挙げられるのか」「寿命を延ばすにはどうすれば良いのか」など、金型の寿命について疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。

金型は使用し続けるといずれは寿命に達するため、寿命の定義やそれを決定する要因、伸ばす方法などを正確に把握しておくことが重要です。金型の寿命を延長できれば、企業の利益率を大幅に高められるでしょう。

そこで本記事では、金型の寿命とは何か、決定する要因、寿命の判定方法などを解説します。記事後半では金型の寿命を伸ばす方法や、寿命よりも少ないショット数で破損した場合の再検討事項なども網羅的にご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

金型の寿命とは

金型の寿命とは、その金型で正常な成形を行い続けることのできる期間です。

正しく使用していても、成形を繰り返して金型に亀裂や摩擦が生じると、設計基準を満たさなくなったり、寸法精度が維持できなくなったりします。そして最終的には製品製造の生産性や品質に悪影響を及ぼすようになります。こうした状態に至ったら、その金型は寿命に達したとみなされ、交換や修理が必要です。

詳しくは後述しますが、ショット数や金型の素材、加工する材料の性質などにより金型の寿命は影響されます。

また似た言葉に、耐用年数が挙げられます。寿命は金型が正常に成形できる期間を指すのに対し、耐用年数は帳簿上の減価償却を目的とした概念です。耐用年数は主に財務処理のために設定されています。そのため、実際の使用状況や劣化状態を必ずしも正しく反映しているとは限らない点には注意しましょう。

金型の寿命が決定する要因

金型の寿命に影響を与える要因は、主にショットの数・金型の素材・加工材料の3つです。これらの要因を詳しく見ていきましょう。

ショットの数

金型の寿命を決定する要因の一つである「ショットの数」とは、その金型が成形に使用された回数です。ショット数は、金型の摩耗や劣化の度合いを直接的に反映する重要な指標となります。

金型の耐用ショット数は、金型の種類や用途により大きくなる点は理解しておきましょう。耐久性が100ショット程度の試作用金型がある一方、数十万回から100万回のショットが可能な量産型タイプもあります。

多くの金型は、設計や製造の段階であらかじめどの程度のショット数ができるのか計算されており、これを把握しておくと金型の寿命もおおよそ把握できます。

例えば100万回のショットが可能な金型の場合、一日に1,000ショット行う計算だと3年弱使用可能です。

金型の素材

金型の素材は、寿命はもちろん製品の品質や生産効率に直接的な影響を与えるため、その選定は重要です。金型に使用される主な素材は以下の通りです。

  • 工具鋼
  • 超硬合金
  • セラミック

まず紹介する素材は工具鋼です。工具鋼は高い耐久性と硬度が求められる用途に広く用いられており、一般的に金型に使用される素材です。工具鋼には主に、炭素工具鋼・合金工具鋼・高速度工具鋼(ハイス)の3つの種類があります。

炭素工具鋼は多くの炭素を含有しており、硬度が高く耐摩耗性に優れている点が特徴です。合金工具鋼にはタングステンやクロムなどの特殊な元素が加えられており、物理的特性が向上しています。高速度工具鋼(ハイス)はタングステンやモリブデンを含む合金で、高速切削に適しているのが特徴で、現在では金型へ応用範囲が拡大しています。

続いて超硬合金の概要を見ていきましょう。超硬合金は硬質の金属炭化物と鉄系金属で構成される合金です。高い硬度と耐摩耗性を有しており、高速度工具鋼(ハイス)と比較して硬度や弾性係数、圧縮強度、熱伝導率、比重が高く、熱膨張率が小さいなどの点が特徴です。耐摩耗性が必要となる加工工具やプレス金型の製造に使用されます。

一般に金属が用いられるイメージのある金型ですが、非金属元素を調合・成形・焼成したセラミックスも金型の素材に用いられます。セラミックスは金属と比較して耐摩耗性に優れており、軽量な点がメリットです。特に窒化ケイ素セラミックスは高温でも優れた機械強度を保ち、破損しにくい特徴があります。

加工材料

被加工材料の硬度が高いと金型にかかる負担が増大し、当然寿命も短くなる点は把握しておきましょう。

被加工材の硬度の方が高い場合、その表面の凹凸が金型の表面を削り取ったり、硬い粒子がこすれ合って傷を付けたりします。アブレシブ摩耗や引っ掻き摩耗とも呼ばれるこの現象により、金型の表面が次第にすり減り、最終的には状態を大きく変えてしまい製品精度にも影響するのです。

被加工材が厚い場合も同様に、より金型に大きな負担がかかるため、結果的に寿命が短くなります。

金型の寿命を判定するには?

金型の寿命を判定するには、いくつか重要なポイントがあります。

まず挙げられるのは、金型自体の傷み具合で判断する方法です。プレス金型の場合、プレートに反りや歪みがある場合、寿命が近づいているサインです。ダイカスト金型の場合は、金型表面にヒビや亀裂が生じる現象であるヒートクラックが発生していたら、そろそろ寿命を迎えると考えてください。

その他の寿命の判定方法には、製造された製品の品質で見極める方法があります。金型が破損した状態で鋳造された場合、品質や精度に問題が生じます。一方で製品に問題がなければ、金型の状態も良好だと考えられるでしょう。

金型の寿命を延ばす方法

金型を頻繁に交換した場合、新しい金型の製作費用や設置費用に加え、交換作業にかかる時間や労力がかかります。製造コスト全体が上昇すれば、それだけ利益率も低下するので、なるべく寿命を延ばしていくことが重要です。

金型の寿命を延ばす方法は、主に以下の通りです。

  • ガスや汚れを定期的に掃除する
  • 業者にメンテナンスを依頼する
  • 金型の組立精度やプレス機の精度を確認する

それぞれの方法を詳しく解説するので、実際に金型の寿命を延ばす取り組みを実施する際の参考にしてください。

ガスや汚れを定期的に掃除する

金型の寿命を延ばすためには、使用後に金型に付着するガスや汚れの定期的な掃除が欠かせません。

成形材料から発生するガスや汚れは、金型の表面に付着すると取り除くことが難しくなり、サビや腐食の原因となります。金型の寿命が短縮されるだけでなく、最悪の場合ガスや汚れにより、製造ラインを一時的に停止させざるを得ない状況に陥りかねないので、決して軽視はできません。

成形作業終了後に柔らかい布やウェスに洗浄剤を含ませて汚れを拭き取り、その後にサビ止め剤を塗るなど、定期的にメンテナンスしましょう。これにより、金型を常にきれいな状態に保ち、サビや腐食による劣化を防げます。

業者にメンテナンスを依頼する

定期的な掃除に加えて、業者による専門的なメンテナンスを活用するのも重要です。業者に依頼すれば、掃除だけでは対処できない部分まで徹底的に洗浄し、劣化や損傷に至る前に対策できるでしょう。

専門的な機器を使用して行う精密な点検、そして必要な部品の交換など、業者によるメンテナンスは金型の寿命を延長させる効果を期待できます。

また長期間使用している場合や故障が出る前に対策したい場合は、オーバーホールを依頼するのも良いでしょう。オーバーホールとは、機械を分解して内部の汚れを洗浄し、損傷した部品を交換する大規模な点検です。

汚れやガスの付着を落とすなど日常的なメンテナンスと比較して手間はかかるものの、金型の長寿命化させ、精度を回復させる効果があります。オーバーホールの頻度は金型の使用頻度や状態にはよりますが、1〜3カ月に1回程度実施すると良いでしょう。

金型の組立精度やプレス機の精度を確認する

金型の組立精度も寿命に影響するので、チェックしましょう。組立精度が甘く、軸がずれていると圧力が全体に均等にかからず、短寿命化につながります。

また、プレス機の精度も併せて確認してください。プレス機が平行になっていない場合、偏って力がかかるので寿命が短くなってしまいます。特にC型プレスは口開きしやすく平行性が保たれていない場合があるので、小まめに点検しましょう。

寿命よりも少ないショット数で破損した場合の再検討事項

ショット数は寿命に大きく影響する要因ですが、耐用ショット数はあくまでも理想的な条件下における数値です。使用状況によっては、寿命よりも少ないショット数で破損する可能性もあります。耐用ショット数ごとの再検討事項を詳しく見ていきましょう。

1,000以下のショット数で破損した場合、成形圧力が金型の許容強度を超えている可能性が考えられます。1万以下で破損した場合には、製作過程に不具合がないか、製造条件は適切かを確認し改善してください。

ショット数が1万を超えても使用できる金型は、十分な耐久性があり適切に使用されていると考えられます。それ以上のショット数で破損した場合は、より長寿命化を図るために、成形に適した仕様の見直しや表面加工の追加などを行うと良いでしょう。

まとめ

金型の寿命は、正常な成形を行い続けることのできる期間を指します。正しい使用方法を心がけてもいずれは寿命を迎え、製品の精度や品質を維持できなくなるので、ショットの回数・金型の素材・加工材料が大きく影響する点は把握しておきましょう。金型が寿命を迎えたかを判断するには、金型自身の状態をチェックするか、もしくは成形された製品の品質や精度を確認してください。

頻繁に交換すると交換費用や手間・労力がかかるので、寿命を延ばすために、定期的に掃除する・業者のメンテナンスを活用する・精度を確認するなどを意識しましょう。寿命よりも少ないショット数で破損した場合は、ショット数に応じて成形圧力が適切か、製作過程に異常はないか、表面加工は適切かなどをチェックしてください。

エバーロイ商事株式会社では、超硬素材選定・超硬製品開発・超硬精密加工に関するサービスを提供しています。素材開発から精密加工まで一貫したソリューションを提供することで、お客さまの課題をスムーズかつ的確に解決します。「金型の寿命が短く交換頻度が高い」「金型をさらに長持ちさせたい」など金型の寿命に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を監修した人

エバーロイ商事株式会社

大久保 文正

エバーロイ商事株式会社

昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。

超硬素材・超硬加工 ソリューションナビを運営するエバーロイは、
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